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 2018年末、ポーランドで第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)が開かれ、2020年からの温暖化対策について国際的な枠組みを定めた「パリ協定」を実施するためのルールが幾つか策定された。

 その1つに欧州委員会(EC)による、大型車からのCO2排出量削減目標がある。欧州委員会は2019年を基準として「2025年に15%減、2030年までに同30%削減する」目標を採択した(図1)。欧州で大型車のCO2排出量の目標を設定したのはこれが初めてという。まず大型トラックに対する規制が始まり、2022年には小型トラック、バス、コーチ、トレーラーなど他の車両タイプも含まれるようになる。欧州のトラック業界が運搬する貨物は年間140億トン(t)に上り、欧州全体の陸上貨物輸送の72%に当たる。CO2排出量は全体の5%を占める。

図1 欧州は2030年までに大型車のCO<sub>2</sub>排出量を19年比で30%削減
図1 欧州は2030年までに大型車のCO2排出量を19年比で30%削減
(写真:Daimler Trucks)
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猛反発する自動車工業会

 しかし、この目標達成はかなり難しいと、欧州自動車工業会(ACEA)は猛反発(図2)。ACEAはこの目標値が提案される前の2017年5月から、「乗用車と大型車は基本的な用途が全く違うので、乗用車と同じアプローチでCO2削減目標を決めるべきではない。大型車は同じモデルでも用途によって乗員数やタイヤ数、エンジン、荷台形状、積載量などが異なり、当然、CO2排出量も違ってくる」とコメントし、現実的なレベルに修正するよう求めていた。技術的・経済的に実行可能な目標として「2025年までに7%減、2030年までに16%減」と述べていた。

図2 大型トラックには一律の排ガス規制は向かない、と訴えるACEAの資料
図2 大型トラックには一律の排ガス規制は向かない、と訴えるACEAの資料
(出所:ACEA)
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 それでも今回、提案通りの「2025年に15%減、2030年に30%減」が採択されたことで、ACEAはすぐに反発した。「このCO2基準は電気駆動トラックや代替燃料エンジントラックの市場をいくらか拡大するかもしれない。しかし、それらを使用するインフラを数年で展開できるかどうかは非常に疑わしい。採択に賛同した加盟国はこの問題に関して責任を負わなければならない」と警告した。