「(ホンダのビジネスジェット機である)『HondaJet』を日本の空で飛ばすことは、我々の悲願だった」。日本で第1号となる顧客にHondaJetを引き渡す式典で、ホンダの航空機事業子会社ホンダエアクラフトカンパニー(Honda Aircraft Company、HACI)社長の藤野道格氏は、こう語った(図1、2)。ホンダが小型ジェットエンジンと小型ジェット機の研究を開始したのが1986年。それから約32年をかけて、同社はついに悲願を達成した。
ホンダがHondaJetの飛行試験を開始したのが、約15年前の2003年12月。当時は、エンジンに前世代の「HF118」と呼ぶターボファンエンジンを使っていた。現行のエンジン「HF120」を搭載した飛行試験用のHondaJetが初飛行に成功したのは2010年12月、約8年前のことである。
その後、HondaJetは最高速度425ノット(787km/h)や最高マッハ数0.72、最大運用高度4万3000フィート(1万3106m)、上昇速度3990フィート/分(1216m/分)を記録、機体が持つ性能の高さを立証。型式証明の取得に向けた多くの試験や改良作業をこなしながら、2012年10月には量産1号機の生産を開始した。2013年12月には、米連邦航空局(FAA)のパイロットが搭乗し、型式証明の取得に向けた最終的な認定飛行試験を行うために必要なFAAの型式検査承認を、2015年12月にはFAAの型式証明を取得し、米国での引き渡しが始まる。それから3年後の2018年12月、HACIはついに国土交通省航空局の型式証明を取得し、日本初のHondaJetの引き渡しにこぎつけた。
今回、型式証明を取得したのは、HondaJetのアップグレード版となる「同Elite」だ。同年5月に発表したばかりの最新型機で、主翼上面へのエンジン配置や自然層流翼(NLF)、自然層流ノーズ、一体成形複合材胴体などのHondaJetの独自技術を引き継ぎながら、複数の最新技術と装備を加えた。航続距離は従来のHondaJetに比べて約17%長い2661km。高周波のエンジンノイズ低減で客室内の静粛性を向上するとともに、アビオニクスシステムの進化で離着陸・飛行時の安定性や安全性を強化した。