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生活を豊かにするとの理解が必要

 だが、HACIにとっては、これはゴールではない。HACI社長でHondaJetの生みの親の藤野道格氏は、冒頭の発言の後で、こう続けた。「新しい交通システムの創造を目指していく」と。

 HondaJetの日本での顧客第1号となったのは、エンジェル投資家でドローンファンド代表パートナーの千葉功太郎氏、元ライブドアCEO(最高経営責任者)で実業家の堀江貴文氏、グリー共同創業者で慶應イノベーション・イニシアティブ社長の山岸広太郎氏らだ(図3)。その千葉氏が訴えるのは、日本における、個人が空を自由に使える未来の必要性だ。東京のような大都市では、これ以上地上を高くすることも地下を深くすることも難しく、空というインフラを利用しない手はないと主張する。

図3 日本の顧客第1号
図3 日本の顧客第1号
中央が千葉功太郎氏、その向かって左側が堀江貴文氏、向かって右側が山岸広太郎氏。向かって1番左がHACI社長の藤野氏。向かって1番右側が日本でのディーラーとなる丸紅エアロスペース社長の遠矢源太郎氏。
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 堀江氏も、「(日本の)空はがら空き。空を使うと移動が非常に速い。既存の交通システムは融通が利かない。米国では比較サイトで(ライドシェアサービスの)ウーバー(Uber)のように(エアータクシーを)予約できる。HondaJetはそれを変えるチャンスになる」と付け加える。

 国土交通省の空港一覧によれば、37都道府県には、民間に開放された空港が存在する注)。ただ一方、日本では定期便優先で空港利用が図られてきたこともあり、発着枠やターミナル/格納庫/整備施設といった施設面など、ビジネスジェット機の利用には制約が多い。近年は、一部の空港で発着枠の拡大や専用施設の拡充など改善もみられるが、さらなる改善が期待されている。

注)栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、山梨県、岐阜県、三重県、滋賀県、京都府、奈良県を除く。

 HACIの藤野氏は、米国のプロゴルファーの中には、トーナメントに出るために宿泊せず、ビジネスジェット機を使う人がいると話す。週末は家族と過ごして精神的にゆとりを持った状態で試合に臨む。その方が良い結果に結びつくと考えており、ビジネスジェット機は投資だという。また同氏は、投資家のウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏は、家を複数持つよりも、家は1軒でもビジネスジェット機を所有することを重視していると打ち明ける。ビジネスジェット機があれば、会いたい人に会って食事を共にして家に帰ることができる。家を持つことが重要なのか、会いたい人に会うことが重要なのか、生き方に影響してくるとビジネスジェット機の価値を訴える。

 もっとも、藤野氏は「(ビジネスジェット機は)人々の生活を豊かにするという理解が得られないと受け入れられない」と明かす。「新しい何かが空を飛ぶのは恐怖。人々の感情を変えていくことが重要」とする。HondaJetは、日本の空の交通システムに対して一石を投じられるのか。ホンダの闘いはこれからも続く。