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 「我々が開発する自動運転ソフトのほとんどはクルマに載らない。人工知能(AI)の学習システムやシミュレーション環境などの“ツール”が全体の9割を占める」─。トヨタ自動車の自動運転子会社であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)は、同社のソフト開発の考え方をこのように説明した。

 人命にかかわる自動運転ソフトは、不具合が許されない。“バグフリー(不具合ゼロ)”を実現するためには、AIの精度を高める学習システムや、さまざまな交通環境を模擬できるシミュレーション環境がカギを握る。実際にクルマに載るソフトはわずか1割に過ぎないという(図1)。

図1 開発するソフトの9割は車載以外
図1 開発するソフトの9割は車載以外
自動運転ソフトは車載ソフトが注目されがちだが、実際には車載ソフトを開発するための各種開発ツールのソフト開発が9割を占める。TRI-ADの資料を基に編集部が作成。
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 ソフトそのものよりも、ソフトを生み出す開発環境に重点的に投資する─。この考え方はIT分野では常識だが、「今の自動車メーカーには、この発想がない」(同社CTOの鯉渕健氏)という。TRI-ADは米国シリコンバレーのソフト開発を経験したIT人材を引き抜き、その手法を取り込む。

 具体的には、複数の技術者が同時に作業できるクラウドベースの開発環境や、大量のデータを処理できるAI学習システム、OTA(Over The Air)で車載ソフトを頻繁に更新できる配信環境、ソフト品質の管理ツール、ハードウエアやソフトウエアのシミュレーションツールなどを重点的に整備する。

 こうしたツールは「AWS(Amazon Web Services)など外部のクラウドサービスを有効活用しながら、肝心な部分は内製する」(同社)という。例えば、自動運転のシミュレーションでは、要素部品にはなるべく市販のツールを使うものの、それらを組み合わせた全体のシミュレーション環境は自前で開発する。さらに、要素部品として足りない機能も自ら開発する。

 オープンソースの開発体制にも力を入れる。IT業界では優れたソフトを開発する仕組みとして、ソースコードを公開してさまざまなソフト技術者が自由に改良できるようにするオープンソースの考え方が定着している。TRI-ADは高精度地図にオープンソースの考え方を適用し、さまざまな企業に使ってもらうことでより多くのデータを収集し、地図のメンテナンス・コストを下げる(関連記事)。また、安全な自動運転を実現する「ガーディアン」と呼ぶソフトもオープンにし、さまざまなMaaS(Mobility as a Service)事業者に使ってもらう。

 オープンソースの開発者コミュニティーも支援する。TRI-ADは2018年12月に、オープンソースの自動運転ソフト「Autoware」の普及を目指す団体「Autoware Foundation」のプレミアムメンバーになった。こうした活動を通じて、企業の垣根を超えた知識やノウハウを取り込んでいく。