欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、「アルファロメオ(Alfa Romeo)」ブランド初となるディーゼル車を日本に導入することを決めた。新開発のコモンレール式2.2Lディーゼル・ターボ・エンジンを搭載した2車種を2019年4月に発売。規制が厳しくなりつつある燃費・排ガス性能の改善に取り組み、RDE(Real Driving Emissions)の第1段階に対応した。
今回、ディーゼル車を設定したのは、SUV(多目的スポーツ車)「ステルヴィオ(Stelvio)」と4ドアセダン「ジュリア(Giulia)」である(図1)。
ステルヴィオ用のディーゼルエンジンは、最高出力が154kWで最大トルクは470N・m注1)。燃費は、WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)モードで16.0km/L。排気量2.0Lのガソリンエンジンを搭載するステルヴィオに比べて、「NEDC(New European Driving Cycles)モードで比較すると最大で45%の燃費改善を実現した」(FCA)という。CO2排出量はNEDCモードで127g/km。
今回の新エンジンは、RDEの第1段階である「Euro 6d-TEMP」に対応した。実走行中の窒素酸化物(NOx)排出量を規制するもので、第1段階のNOx排出量の規制値は168mg/kmである。日本のポスト新長期排出ガス規制も満たす。
高圧と低圧のEGRを搭載
Alfa Romeoでエンジン技術部門を統括するパオロ・パロッティ(Paolo Pallotti)氏は新エンジンの特徴として、「燃料噴射装置と後処理装置の両面で改良を施した」点を挙げる。
燃料噴射装置での大きな改良は、コモンレールシステムの変更である。今回、Alfa Romeoが採用したコモンレールはソレノイド式インジェクターを備え、1回の燃焼で燃料を8回噴射する。8回噴射は2005年に実用化した従来エンジンから変わらないが、燃料噴射圧をこれまでの160MPaから200MPaに高めた。コモンレールはドイツ・ボッシュ(Bosch)製である。
燃焼効率をさらに高めるため、EGR(排ガス再循環)に手を加えた。高圧(ハイプレッシャー)EGRと低圧(ロープレッシャー)EGRの2種類を搭載した(図2、3)。
高圧EGRはターボチャージャーの上流に配置し、エンジンの冷間始動時や暖機時にエンジンからの未処理排出物を減らす役割を担う。低圧EGRはエンジン直下の排ガス後処理装置の下流にあり、NOxの発生を抑える。