ソニーは、800万画素クラスの車載用CMOSイメージセンサーの量産を2020年に開始する。前方監視向けのカメラに搭載し、自動ブレーキや自動運転などを実現する用途で使う。他社を含めた現行品は200万画素クラスで、多画素化によって物体認識の精度や範囲を拡大する。
17年にサンプル出荷を開始しており、当初の計画では18年6月に量産を始める予定だった。仕様の変更・追加などで遅れていたが、ようやく量産時期が固まった(図1)。800万画素クラスの車載用CMOSイメージセンサーを巡っては、ソニーだけでなく米オン・セミコンダクター(ON Semiconductor)も20年代前半に量産を計画する。
500m先の車両や白線を認識可能
多画素化の目的は大きく2つ。1つは、より遠方にある物体を認識しやすくすることである。800万画素あれば、FOV(Field Of View、視野角)が30度のレンズと組み合わせた場合、「500m先にある車両の種類や白線の状況を検知できる」(ソニーの担当者)という(図2)。道路標識の認識では、約160m先にあるものを鮮明に撮れる水準である。200万画素クラスの現行品では、100m以上先にある制限速度の標識の数字を判別できない。
もう1つの目的は、より広範(広角)な画像を撮ることである。自動車メーカーが対策を急いでいるのが、市街地の交差点での巻き込み事故だ。歩行者や自転車が車両の死角から侵入してくる危険に備える。
特に、自転車は速いスピードで自動車の前を横切るので、より広い角度での撮影が求められる。画素数が不十分だと、広角にするほど1度当たりの画素数が減り、撮影画像がぼやける。開発品を使えば、FOVが120度のレンズとの組み合わせで137m先の車両や白線を検知できる。歩行者であれば、55m離れていても認識可能だ。