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 欧米FCA(Fiat Chrysler Automobiles)とフランス・ルノー(Renault)が経営統合に向けて検討を始めた注)。自動車メーカーは、依然として規模を追求しているからだ。ルノーが日産に経営統合を持ち掛けている中、FCAが突然、攻めに出た。

注)FCAはルノーに経営統合を提案したが、条件が折り合わず、一旦は白紙に戻った。その後、FCAとルノーは再検討を始めた。

 FCAは、「提案の合理性を確信している」という声明を出すとともに、撤回の理由として「統合を成功させるための政治的な状況が現在のフランスに存在しない」ことを挙げた。提案では、統合によるコスト削減効果は年50億ユーロ(1ユーロ=125円換算で6250億円)を超え、ルノーと連合を組む日産自動車と三菱自動車にもそれぞれ年10億ユーロ(同1250億円)の効果があるという見通しを示していた。

 直近の2019年3月期連結決算において、日産自動車と三菱自動車の営業利益はそれぞれ3182億円、1118億円だった。そこに1000億円以上が上積みされるとなれば非常に大きい。だが、仮にFCAとルノー・日産・三菱連合が統合するとして、日産自動車と三菱自動車は本当にそのようなコスト削減効果を得られるのだろうか。

消えた「400万台クラブ」

 自動車業界では多くの合従連衡が繰り広げられてきたが、ルノー・日産・三菱連合のように成功した(といわれてきた)ものばかりではなく、失敗に終わったものも少なくない。その代表例が、FCAの一員である米クライスラー(Chrysler)とドイツのダイムラー(Daimler)の統合だ。両社は1998年に統合したが、目立った成果を残せないまま2007年に統合を解消した。

 1990年代の自動車業界では「生産台数が年400万台に満たないメーカーは生き残れない」という言説が飛び交い、「400万台クラブ」なる言葉も生まれた。両社の統合はその象徴といわれていたが、失敗が明らかになると、そのうち誰も400万台クラブという言葉を使わなくなった。近年は新たに「1000万台クラブ」として復活しつつあるが、その一角を占めているルノー・日産・三菱連合に統合の話が持ち上がったことからも、台数そのものに意味や根拠がないのは明白である。

 同じく1000万台クラブのトヨタ自動車は、15年前と比べて連結売上高が約1.7倍、連結販売台数が約1.5倍になった。ただ、それでもっと利益を稼げるようになったかといえば、そうでもない。2014年度(2015年3月期)と2015年度は営業利益率が10%を超えたものの、直近の2016~2018年度は7~8%台にとどまった。リーマン・ショック前の2000年代は8~9%台で推移していたので、ようやく以前の水準に戻ったというところである。