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 これから厳しさを増す燃費規制をクリアするため、エンジン単体でどこまで熱効率を上げられるかに、エンジニアたちは挑戦している。「人とくるまのテクノロジー展2019」で、エンジンの熱効率を高める新技術を追った。

 シチズンファインデバイスは、燃焼圧センサーを展示した(図1)。聞き慣れないセンサーだと思われるかもしれないが、それも当然だ。現時点で量産車のエンジンには搭載されていない。しかし、これまでも開発中のエンジンには装着され、実験部のエンジニアたちに燃焼状態を可視化するために使われてきた。マツダが2019年秋に発売するといわれている革新的エンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」は、サプライヤーは不明だが燃焼圧センサーを組み込む予定だ。

図1 シチズンファインデバイスの燃焼圧センサー
図1 シチズンファインデバイスの燃焼圧センサー
これ以外にも様々な種類があり、エンジンのノイズによる影響を受けにくい絶縁タイプの設定もあった。(筆者撮影)
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 SKYACTIV-Xは、通常のストイキ直噴の火花点火による燃焼に加え、ストイキ直噴のSPCCI、スーパーリーンバーンでのSPCCIという、全部で3つの燃焼モードがあり、その切り替えを確認するために燃焼状態をセンサーで検知する。

 シチズンファインデバイスは、その名の通り時計メーカー、シチズンの子会社である。同社がなぜ燃焼圧センサーを手がけているのだろうか。圧力を検知する素子として使われている圧電素子は、実は時計に使われる水晶も含まれる。燃焼圧センサーは、高温高圧の状態にさらされるため、水晶では精度や耐久性で問題がある。現在使われているのはランガサイト系のランガテイトという圧電素子だ。

 精密な時計を作っているだけに、後発でも世界最小の燃焼圧センサーを作り上げるなど、同社の技術力は高い。今後はHCCIなどの圧縮着火ではなくても燃焼圧センサーを組み込んだエンジンが登場する可能性は十分に高い。こうした日本の技術力が再び強みを見せてくれることになればうれしいものだ。

 シェフラージャパンは、新しい気筒休止のシステムを開発した(図2)。これはホンダのVTECのように、ロッカーアームを分割して切り替えることで、シリンダーのバルブ駆動を停止させる。VTECと異なるのは、作動には油圧ではなくソレノイドバルブによりレバーを動かして、ピンを押し込むことによって作動させる点だ。

図2 シェフラーの気筒休止CDA(シリンダー・デ・アクティベーション)
図2 シェフラーの気筒休止CDA(シリンダー・デ・アクティベーション)
eRockerと呼ばれる、ソレノイドで駆動するレバーがロッカーアームのピンを押し込むことで、バルブ駆動を休止させる。(筆者撮影)
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 エンジニアリング企業のドイツFEVは、米TuLAと気筒休止技術DSF(ダイナミック・スキップ・ファイア)を開発中だ(図3)。こちらも切り替え式のロッカーアームと燃料噴射と点火の制御により気筒休止させる。排気量2Lの4気筒エンジンの場合、1気筒から4気筒まで、それも休止するシリンダーの位置も様々に変化させる柔軟な気筒休止をすることにより、振動を抑えながら燃費を向上させることが可能だという。

図3 FEVがTuLAと共同開発中のDSF
図3 FEVがTuLAと共同開発中のDSF
負荷に応じて4気筒から1気筒まで自在に休止させる。振動を軽減する休止パターンをノウハウとして持っているようだ。(筆者撮影)
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 エッチ・ケー・エス(HKS)は市販車のチューニングから、環境対応車の効率向上までカバーする領域を拡大中(図4)。排ガスのエネルギーから発電するターボジェネレーターと3次元カムに注力している。

図4 HKSの3次元カムを組み込んだシリンダーヘッドのサンプル
図4 HKSの3次元カムを組み込んだシリンダーヘッドのサンプル
カムプロフィールが斜めになっており、ダイレクトにバルブを駆動しながら、放射状にレイアウトできるため半球形燃焼室を実現できる。(筆者撮影)
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