HUD(ヘッド・アップ・ディスプレー)世界首位の日本精機は、運転者の視点から10m先に映像を見せる新型HUDを開発した注1)。表示距離を従来の3倍以上に延ばし、世界最長レベルを実現する。ドイツ高級車メーカーが2020年に量産を始める新型車への採用が決まった(図1)。
注1)HUDは、ステアリングホイール前方のインストルメントパネル(インパネ)部分に組み込む車載機器。車速や経路案内といった情報を、虚像として運転者の視点の前方に映す。運転者は、センターメーターやカーナビに視線を移動させることなく、運転に必要な情報を得られる利点がある。
映像の表示距離を延ばしたことに加えて、表示画角を左右10度、上下4度以上に広げた。これにより、運転者が目にする表示範囲は、現行モデル比約7倍の80インチに拡大する。
日本精機が新型HUDを供給する企業名は分かっていない。ただ、同社が既にHUDで供給実績があるドイツ・ダイムラー(Daimler)、同BMW、同アウディ(Audi)のいずれかとなる見通し。旗艦セダンといった、車格が大きい車両に適用する可能性が高い注2)。
注2)安全性を向上できるとして、ドイツ高級車を中心に搭載が進む。例えば、ドイツの高速道路「アウトバーン」は原則、速度制限が無い。日本の高速道路をはるかに上回る速度で走行することが多く、センターメーターやカーナビに視線を落とした一瞬が危険につながる。運転中の視線移動を抑えられるHUDの価値を車両購入者が享受しやすい。
一般的に、映像の表示距離と運転中の焦点距離が近いと運転者の負担が減る。既存のHUDの表示距離は、高性能モデルでも3m前後にとどまる。大きく表示距離を延ばすためには、HUDの内部機構を根本的に変える必要がある。