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 ダイハツ工業が2019年7月に全面改良した軽自動車「タント」は、同社内製の新型無段変速機(CVT)「D-CVT(デュアルモードCVT)」を搭載した。一般的なCVTのベルト駆動に加え、ベルトと歯車(ギア)を組み合わせた動力伝達方式を併せ持つ機構が特徴だ。低・中速域は一般的なCVTと同様にベルトで動力を伝え、高速域はギアを介した動力伝達に切り替える。この仕組みにより、変速比幅を従来の5.3から7.3に拡大した。

 エンジンからの入力をたどりながら、D-CVTの構造を見ていく(図1)。まず入力軸に、D-CVTの特徴の1つに当たるギア(スプリットギア)が設置されている。スプリットギアはCVTの出力軸のギアにつながっている。スプリットギアはクラッチを介して入力軸と同期する仕組みだ。低・中速域ではクラッチを切った状態となっているため、スプリットギアは空転。エンジンからの入力トルクがCVTの出力軸に伝わらないようになっている。

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図1 D-CVTの主な構造
図1 D-CVTの主な構造
CVTのベルト駆動に加え、ベルトと歯車(ギア)を組み合わせた駆動方式を併せ持つ。(a)構造の概要。(b)D-CVTのカットモデルの外観。(撮影:日経Automotive)
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 エンジンからの入力軸はプライマリプーリに接続。さらにCVTのベルトを介してセカンダリプーリにつながる。セカンダリプーリの出力軸の先には、遊星歯車機構を設置。低・中速域では、遊星歯車機構を構成する太陽歯車(サンギア)、複数の遊星歯車(プラネタリーギア)、外側の内歯車(リングギア)がクラッチによって一体化するように固定しており、セカンダリプーリの出力軸と1対1の比率でCVTからの出力軸に接続する流れだ。