全2238文字
PR

 パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏は、2019年11月22日の社長会見で登壇し、中期戦略の考え方と取り組みの進捗について説明した(図1)。注目を集めた一つのトピックは車載電池事業をどうするかである。

図1 パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏
図1 パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 パナソニックは、電気自動車(EV)大手の米テスラ(Tesla)と二人三脚の形で、米国のEV向け電池工場「ギガファクトリー」を展開している。こうした中、先だって、テスラが中国にEVの新工場を建設したことで、パナソニックがどのような方針を示すのか注目されていた。津賀社長は会見の中で、「テスラの中国工場に関連して、我々が中国に電池の生産拠点を構える具体的な計画は現時点ではない」と述べた。テスラが中国工場で造るEV向けの電池として、「中国で製造している電池メーカーの製品が採用されるのか、米国のギガファクトリーから電池が運ばれるのかはテスラが決めること」(津賀氏)とした。

 こうした中、パナソニックが現在注力しているのは、ギガファクトリーの生産性向上という。「ギガファクトリーではもともと年間35GWhという生産能力(キャパシティー)の電池工場を目指してきたが、現時点ではまだ少し届いていない。これを早期に実現するとともに、電池の中身を変えていくことで、追加の大きな投資なしでキャパシティーをさらに上げていきたい」と津賀氏は語る。その後、「我々の採算性が改善し、電池のキャパシティーが不足する事態になったときには、テスラと協議してその後の進め方を決定したい」(津賀氏)とした。

 パナソニックのオートモーティブ事業は2019年度通期で約395億円の営業損失(調整後)を見込んでいる。車載機器事業および車載電池事業の両面での不振がひびいた形である。このうち、車載電池事業では、円筒形電池を生産する前述のギガファクトリーでも苦戦が続いてきた。「世界最大規模の工場で経験のない急速立ち上げに苦戦した」(パナソニック オートモーティブ社 社長の楠見雄規氏)ことが理由だ。実際、同社の2019年第4四半期時点の円筒形電池の生産能力は、ギガファクトリーで生産を開始した2017年度第1四半期に比べて約4倍に増える見込みで、急速立ち上げを進めていることが分かる。

 苦戦の状況を受け、日本からもエンジニアがギガファクトリーに派遣され、支援を続けるなどした結果、ここにきて生産が安定化し、「ギガファクトリーの単月黒字化にメドがたった」(楠見氏)という。2019年度内にフル稼働の見込みとする。パナソニックはギガファクトリーの稼働率を着実に改善し、2019年度下期の黒字化に取り組む方針である。円筒型電池事業は「さらなる固定費削減と技術開発の進化により、安定的な黒字体質を目指す」(楠見氏)とした(図2)。

図2 パナソニックの円筒形電池事業の方針
図2 パナソニックの円筒形電池事業の方針
(資料:パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]

 パナソニックの津賀氏は、車載事業について、「2019年度は底だが、利益が出ない領域ではない。市場の成長性は高いが、我々がビジネスモデルをどう変えていけるのか、我々にとって挑戦であり、『再挑戦事業』と位置付けている」と語った。

 こうした中、津賀氏は改めてテスラの将来性を高く評価し、ともに歩んでいく姿勢を明確に示した。津賀氏は電気自動車事業について、「EVをどのセグメントで売っていくのかは各社共通で難しい」との見方を示した。その上で、テスラについて、「非常にいいセグメントを形成している。今後グローバルに成長して利益が出るという可能性がEVメーカーの中では最も高いメーカーがテスラだと私は確信している」(津賀氏)と高く評価した。津賀氏はテスラとの関係性をこう続けた。「そういう中で私(パナソニック)の役割はパートナーであり続けることを担保することである。パートナーであり続けるということは、テスラが赤字であれば我々も赤字に甘んじてでも支え続ける。テスラが黒字になれば、我々も黒字をしっかり確保できる価格で買ってもらう。そして、将来の投資に対して、一方的に無駄な投資が起きないように、現実的な投資戦略を両社で考える」。

 一方で、「テスラの先行きが危ういという結論が出た場合にはどうするのか」という質問に対して、「そういうことにはならないと思うが、万が一の場合には再協議が必要になる」(津賀氏)とした。