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 日産自動車は今後のエンジンの開発において、Additive Manufacturing(AM:付加製造)が鍵を握ると指摘する。中でも、金属を材料として3D(3次元)プリンターで造形する技術は環境や車外音といった規制への対応に効果的とした。部品の軽量化を進めるうえで3Dプリンターを活用し、素材や部品の強度などを根本から見直した新たな工法の確立を目指す。

 日産のパワートレイン生産技術開発本部(パワートレイン技術企画部)でパワートレイン技術統括グループエキスパートリーダー(PT新商品工法開発)の塩飽紀之氏は、今後厳しさを増す規制に対応するために、エンジンの開発において新たな工法の活用が必要だと説明する(図1)。その一例が3Dプリンターの活用だ。

図1 日産自動車パワートレイン技術統括グループエキスパートリーダーの塩飽紀之氏
図1 日産自動車パワートレイン技術統括グループエキスパートリーダーの塩飽紀之氏
2019年10月に開催されたストラタシス・ジャパン主催の「3D プリンティングフォーラム 2019」で講演した。(撮影:日経Automotive)
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 例えば日産は、シリンダーヘッドの試作品の作製で、ドイツSLMソリューションズ(SLM Solutions)のパウダーベッド方式の3Dプリンター「SLM500」を活用している。アルミニウム合金を素材に使ったものだ。

 実部品への活用は耐久評価などが課題としてあるが、「吸気・排気のメカニズムの確認といった機能性の評価では十分に使える。従来の2~3カ月から5日に短縮でき、開発スピードが上がった」(塩飽氏)と評価する。3Dプリンターで試作品を数種類作成することで、短期間での比較・検討が可能になった。

 ただ、「従来の鋳造でできる部品と同じものを3Dプリンターで製造しても意味がない。今後は、付加価値をどう見いだすかが重要」と塩飽氏。3Dプリンターの技術を生かした開発の1つとして、エンジン部品の軽量化に同社は取り組む方針だ。