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現行エンジンをベースにコストを抑える

 新型車の開発責任者を務めたダイハツ技術統括本部副本部長の大野宣彦氏は、「エンジンの新規開発には、膨大な時間と費用がかかる。現行機を使うことで開発コストを抑えながら、求める性能を実現できた」と言う。実際に新型車は、現行機に新開発のCVT(無段変速機)「D-CVT」注1)を組み合わせることで、燃費性能はスズキのクロスビーを上回った。

注1)新開発のCVTは、軽自動車のエンジンだけでなく、排気量1.0~1.5Lの小型車のエンジンとの組み合わせも想定して開発した。トルク容量が100N・mで主に軽自動車向けの小容量型はタントに使い、同150N・mで小型車向けの中容量型を今回の新型車に搭載した。

 クロスビーは、排気量1.0Lで直列3気筒の直噴過給エンジンを搭載する。モーターでエンジンの駆動を支援する簡易ハイブリッド車(MHEV)であり、JC08モード燃費は22.0km/Lとなっている。

 新型車に搭載するエンジンは、排気量1.0Lで直列3気筒のポート噴射の過給エンジン「1KR-VET」である。JC08モード燃費は23.4km/Lで、MHEVのクロスビーを1.4km/L上回る。新型車の車両質量は970kg。クロスビーより10kg重いが、燃費性能は同車より優れる。実用燃費の指標であるWLTCモード燃費でも18.6km/Lを達成した。

インタークーラーの搭載位置を変える

 新型車の過給エンジンは、ダイハツとトヨタの小型車「トール/ルーミー/タンク」に搭載する現行機と型式は同じだが、改良を加えた。最大の改良点は、空冷式インタークーラーの搭載位置を変えたことである。トールなど3車種ではインタークーラーをエンジンの上に置いたが、新型車では前置きに変えた(図2)。

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図2 新型車とトールなどの3車種のエンジン
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図2 新型車とトールなどの3車種のエンジン
(a)新型車では、インタークーラーの搭載位置をエンジンの前に変えた。(b)トールなど3車種のエンジンは、インタークーラーをエンジンの上に置く。(撮影:日経Automotive)

 過給エンジンでは排ガスを利用してタービンを回し、同軸上にある圧縮機で空気(吸気)を圧縮し、エンジンに送り込む。圧縮した吸気は高温になるため、そのままエンジンに送り込むとノッキング(異常燃焼)が起こりやすくなり、動力性能や燃費が低下する。

 インタークーラーの役目は、熱交換によって高温の吸気を冷やすことである。吸気との熱交換によってインタークーラーも高温になるため、インタークーラー自体の冷却も必要になる。新型車ではインタークーラーをエンジンの前に搭載し、インタークーラー自体の温度上昇を抑えた。これにより吸気を効率良く冷やし、エンジンの動力性能や燃費の低下を抑えられたという注2)

注2)新型車のエンジンの最高出力は72kW、最大トルクは140N・mである。クロスビーのエンジン(最高出力は73kW、最大トルクは150N・m)に迫る。

 トールなど3車種はエンジン室の奥行きに制約があったため、インタークーラーはエンジンの上にしか置けなかった。新型車はDNGAに基づく新PFを適用して、トールなど3車種のPFより前部のオーバーハングを長くした。その結果、エンジン室の奥行きが広くなり、インタークーラーをエンジンの前に置けるようになった。