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 「電動パワーステアリング(EPS)の競合としては、(ショーワと日立オートモティブシステムズは)小さな相手だと感じていて、これまであまり意識していなかった。だが、4社が統合したことで統合制御システムなどが実現することになる。(事業規模は)小さなドイツ・ボッシュ(Bosch)のようなもの。これからは意識していかないとならない」―。ジェイテクト社長の安形哲夫氏は、ホンダと日立製作所の子会社4社が統合した新会社を強力なライバルと認め、対抗心を示した(図1)。

図1 ジェイテクト社長の安形哲夫氏
図1 ジェイテクト社長の安形哲夫氏
ジェイテクトは2019年11月、同社が注力する事業や新規事業についての説明会を実施した。(撮影:日経Automotive)
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 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)をきっかけに激しさを増している部品メーカーの再編は、大手部品メーカーにとっても気を許せない状況になっている。中でもジェイテクトが警戒感を強めているのが、EPSに関連する事業だ。

 ジェイテクトは現在、自動運転と電気自動車(EV)に関する事業に注力している。特に自動運転分野はEPSが関連する同社の主力事業として位置づけており、新たな取り組みを進めているところだ(図2)。

図2 ジェイテクトが提案する左右独立型ステア・バイ・ワイヤのシステム
図2 ジェイテクトが提案する左右独立型ステア・バイ・ワイヤのシステム
左右の車輪を結ぶラック軸を使わず、左右の車輪が独立する構造。車輪の操舵(そうだ)はサスペンション上部のモーターで行う。2025年頃に自動車メーカーへ提案することを目指す。(撮影:日経Automotive)
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 2019年4月にジェイテクト、デンソー、アイシン精機、アドヴィックスの4社が共同で出資して設立した「J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)」はその1つ。ジェイクワッド ダイナミクスは自動運転の統合制御ソフトウエア開発を担う。ジェイテクトの出資比率は5%と低いものの、出向者を派遣したり、車両制御全体の機能を勉強させるために社員を送ったりなど人材の交流を活発に行っているという。ジェイテクトは統合制御をきっかけにEPS単体での提案からの脱却を図り、「走る」「曲がる」「止まる」を統合的に提案できる体制を整える方針だ。

 だが、ジェイクワッドの立ち上げから1年もたたないタイミングで状況が急変した。2019年10月にホンダと日立製作所が、ケーヒンとショーワ、日信工業、日立オートモティブシステムズの4社を経営統合し、日立オートモティブシステムズを存続会社とした新会社の設立を発表したのだ。