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 ホンダが2020年2月に発売した新型の小型車「フィット」は、同時期の発売となったトヨタ自動車の新型「ヤリス」に燃費性能で大きく水をあけられた。快適な車内空間の実現や予防安全装備の充実にリソースを割いたことが響いた。それでも、フィットのパワートレーン開発者が譲らなかったこだわりがある。

 「技術者なので当然、悔しいですよ」―。新型フィットでパワートレーン開発を担当した技術者は打ち明ける。その言葉とは裏腹に、表情はどこかすっきりとしていたことに違和感を覚えた。

 それは、同時期の発売となったトヨタのヤリスとの燃費差について話を聞いているときだった()。車格や価格帯が同じフィットとヤリス。フィットのハイブリッド車(HEV)の燃費はWLTCモードで29.4km/Lで、同36.0km/Lのヤリスに大きく差をつけられた。

表 同時期の発売となったホンダ「フィット」とトヨタ自動車「ヤリス」
燃費性能に優れるハイブリッド仕様車の数値を比較した。(画像:ホンダ、トヨタ自動車)
表 同時期の発売となったホンダ「フィット」とトヨタ自動車「ヤリス」
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 2001年に初代の販売が始まったフィットは、広い室内空間と優れた燃費性能を武器に販売台数を伸ばした。ライバルであるトヨタのヤリス(旧・ヴィッツ)や「アクア」などと燃費性能で真っ向勝負してきたが、4代目となる新型フィットで開発方針を大きく転換させた。

 新型フィットが目指したのは「“心地よいこと”を最大の価値にすること」(フィットの開発責任者を務めた本田技術研究所の田中健樹氏)だった。ホンダの開発陣は「燃費を諦めた」とは言わない。だが、最終的に出てきた数値を見れば、新車開発における燃費技術の優先順位が下がったのは間違いない。その証拠に、新型フィットの取材会で、ホンダは燃費の話題を一切出していない。

 200万円前後で販売する車両で多くを求めるのは難しい。「心地よさという新たな価値を付加していくためには、何かを諦める必要があった」(同氏)のだ。この方針の下、新型フィットの開発では快適な車内空間の実現や予防安全装備の充実にリソースを割いていった。