全2374文字
PR

 SiC(炭化ケイ素)の本格採用は時期尚早─。トヨタ自動車とホンダが同じ結論に達した。両社は2020年2月に発売した新型ハイブリッド車(HEV)のインバーターで、SiCをパワー半導体素子(パワー素子)に採用することを見送った。

 SiCの代役としてトヨタとホンダが白羽の矢を立てたのが、「RC(Reverse-Conducting:逆導通)-IGBT」と呼ばれる新型のSi(シリコン)製IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)だ。詳しくは後述するが、SiCほどではないものの、現行のIGBTに比べて小型化や損失低減の効果を得られる。

 車両への本格搭載で先陣を切ったのがトヨタである。新型「ヤリス」のHEVにRC-IGBTを採用した(図1)。モーター制御の改良や高効率なDC-DCコンバーターの採用などと合わせて、従来のハイブリッドシステムに比べて30%、伝達損失を低減した。インバーターやDC-DCコンバーターを一体化したPCU(パワー・コントロール・ユニット)はデンソーが供給する(図2)。

図1 トヨタ自動車の新型「ヤリス」
図1 トヨタ自動車の新型「ヤリス」
ハイブリッド車(HEV)の価格は199万8000円(消費税込み)から。Bセグメント車向けのプラットフォーム「GA-B」を適用した。(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 トヨタの新型ヤリスに搭載するPCU
図2 トヨタの新型ヤリスに搭載するPCU
パワー半導体としてRC-IGBTを採用したパワーモジュール(パワーカード)を備える。(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

 ヤリス発売の4日後にホンダが投入した新型「フィット」も、PCUに同社としては初めてRC-IGBTを適用して大幅に小型化した(図3)。フィットとして新採用となる電圧を駆動用モーターの要求電圧に昇圧するVCU(ボルテージ・コントロール・ユニット)やこれまで別体だったDC-DCコンバーターを内蔵しながら、PCUの体積を10%削減した。

図3 ホンダの新型「フィット」
図3 ホンダの新型「フィット」
HEVの価格は199万7600円(消費税込み)から。(撮影:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]

 これにより、先代フィットでは荷室下に配置していたPCUを、エンジンルール内に移設できた(図4)。配線ケーブルの短縮や工数の削減にも貢献したPCUを開発したのはケーヒン。ホンダで新型フィットのPCU開発に携わった技術者によると、「フィット以外の新型HEVにもRC-IGBTを搭載したPCUを採用していく」方針だ。

図4 新型フィットのエンジンルーム
図4 新型フィットのエンジンルーム
先代車では荷室下に配置していたPCUをエンジンルーム内に移設した。(撮影:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]