全3024文字
PR

 新型コロナウイルス(新型コロナ)の感染拡大の影響で、業績が大きく悪化した日本の自動車メーカー。コロナ禍の中で業績回復を目指すが、各社で明暗が分かれる。早期に回復しそうなのが、トヨタ自動車とホンダ、SUBARU(スバル)の3社である。日産自動車と三菱自動車の黒字化は2021年度以降になる。マツダとスズキは黒字化の時期が見えず、スズキは20年度通期の業績見通しも算定できない状況だ。収益基盤を強化する各社の事業構造改革の真価が問われている。

 トヨタは新型コロナの影響で世界販売台数(連結販売台数)が激減したが、全社的な原価低減活動などが寄与し、20年度第1四半期(20年4~6月)の連結決算で、営業黒字を確保した(図1)。同期に営業黒字となったのは、実質的にトヨタだけである注1)

図1 各社の営業利益
図1 各社の営業利益
20年度第1四半期に営業黒字を確保したのは実質的にトヨタだけ。20年度通期ではトヨタとホンダ、スバルが営業黒字を計画する。各社の発表データを基に日経Automotiveが作成。( )内は前年比の増減率。
[画像のクリックで拡大表示]
注1)営業赤字となったのは日産とホンダ、スバル、マツダ、三菱自の5社。スズキは13億円の営業黒字だったが、⼯場の操業停⽌に伴う損失として、固定費相当額で154億円を特別損失に振り替えたため、実質的には営業⾚字である。

 新型コロナの影響によって、世界の自動車市場は20年度第1四半期に大きな打撃を受けたが、同第2四半期(20年7~9月)以降は緩やかな回復に向かうとみられる。こうした状況を受けてトヨタは、自社の世界販売台数が第2四半期には前年同期の85%まで、第3四半期(20年10~12月)には同95%まで戻り、第4四半期(21年1~3月)には前年同期比で105%になるとみる。

 世界市場の回復を見込んで、20年度通期(20年4月~21年3月)の世界販売台数を、期初の計画の700万台から720万台に上方修正した。同期の業績では、5000億円の営業黒字を計画する。トヨタ社長の豊田章男氏は、「20年度通期に5000億円の営業利益を確保できれば、企業体質の強化を目指したこれまで取り組みの成果と言えるのではないか」と強調する(図2)。

図2 トヨタ自動車社長の豊田章男氏
図2 トヨタ自動車社長の豊田章男氏
「20年度通期に5000億円の営業利益を確保できれば、これまで企業体質を強化してきた成果と言えるのではないか」と言う。(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]