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 欧州の次期排出ガス規制の骨子が見えてきた。新しくアンモニア(NH3)を対象にするなど、現行規制を一層厳しくする(図1)。エンジンコストが上がるのは必至だ。希薄燃焼(リーンバーン)の採用を後押しするとの見方がある。2020年内に決まる見込みで、23〜24年の開始が有力視される。

図1 排ガスの浄化性能を評価する試験
図1 排ガスの浄化性能を評価する試験
(出所:Bosch)
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 欧州の排出ガス規制は世界で最も厳しい水準で、米国を除く大半の国や地域で参考にされて影響力が大きい。二酸化炭素(CO2)排出量規制と異なり、排出ガス規制を満たさない自動車は販売できない。自動車パワートレーンの開発で、最も重視される。

 現行規制はEuro(ユーロ)6dで、次期規制の名称はユーロ7が有力。ユーロ6eになる可能性も残る。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、議論が遅れているようだ。決定は21年以降にずれ込む可能性がある。

 次期規制のうち、自動車メーカーがとりわけ頭を悩ましそうなのが、NH3への対策である。これまで規制対象だった窒素酸化物(NOx)や炭化水素類(HC)、一酸化炭素(CO)と異なり、よく使われる三元触媒で浄化できない。自動車メーカーはNH3酸化触媒といった新技術の採用を模索し始めた。

 NH3は、ガソリンエンジンの混合気で燃料が濃い状態で燃えたとき(リッチ運転時)に発生しやすい。現行エンジンの大半は燃料と空気の比率を理論空燃比(14.7)として運転するが、実態は気筒内に濃淡がある。濃いところでNH3が発生しがちだ。エンジン単体の制御で抑えきるのは難しいとみられており、後処理装置の検討が進む。

 別の対策案として、希薄燃焼にすればリッチな状態がなくなりNH3が発生しにくくなり、新触媒を省けるという考え方がある。希薄燃焼で燃費性能を高められる利点もあり、一挙両得というわけだ。

 ただし希薄燃焼にすると三元触媒が効かなくなり、ある程度の希薄度に達するまではNOx排出量が増える。新たにNOx後処理装置の追加が要るとなれば、NH3対策部品の追加と比べてコストや燃費で総合的にどちらが有利か、各社の判断次第である。