これから通過する交差点は、どこから入ってどこから出られるのか─。ニューラルネットワーク(NN)を使って、そうした交差点の構造を走りながらリアルタイムに認識する技術を開発したのが米NVIDIA(エヌビディア)である。従来は、交差点ごとに周辺を含めた高精度3D(3次元)マップを用意し、交差点の構造を認識する方式が主流だった。ただ、同マップをあらゆる交差点に対して用意することは難しかった。
「クルマの交通量が少ない過疎地では、高精度3Dマップが作成されるまでに時間がかかる。だが、一方で過疎地は高齢者が多く、自動運転に対するニーズが高い。高精度3Dマップがなくても交差点を認識できる技術が求められている」。エヌビディアの日本法人でシニアソリューションアーキテクトを務める室河徹氏は、同社が人工知能(AI)で交差点を認識する技術を開発した背景をこう説明する。
同氏によれば、自動運転車が交差点を走行するには、対象とする交差点がどこから入ってどこから出られるのか、他の車両がどこから入ってくる可能性があるのか、どこに横断歩道があり、どこで車両を停止させなければならないのか、といった交差点の構造を認識できなければならない。そのために、これまで主流となっていたのが、交差点とその周辺の高精度3Dマップを用いる方法である。
ただ、高精度3Dマップをそうした用途に用いるためには、交差点の進入線/脱出線、車線の区分線(車線境界線や車道外側線など)、信号機や標識の配置、各方向の車線数など、交差点ごとに構造的な特徴を手動でラベリングする必要があった。対象とする交差点の数だけ、そのための情報収集やラベリング作業が必要となるため、手間やコストがかかり、世界中のあらゆる交差点に対応することは難しかった。また、道路工事など交差点に一時的な変化が発生した場合など、それを反映させて後で戻すという煩雑な作業が求められるという課題もあった。