刷新か延命か─。トヨタ自動車が選んだのは後者だった。トヨタ自動車は、レクサスブランドのFR(前部エンジン・後輪駆動)セダン「IS」を部分改良した。2013年5月に発表した3代目のISから内外装や先進運転支援システム(ADAS)を変更した一方で、プラットフォーム(PF)は7年前に導入したものを使い続けることにした。
トヨタは数年前からレクサスの車種再編に取り組んできた。大方針はSUV(多目的スポーツ車)重視で、販売が低迷するセダンを縮小する戦略である。18年時点では5車種あったレクサスのセダンは、「HS」が同年3月に販売を終了し、「GS」も20年8月に生産が終了した(図1)。
生き残ったのは「LS」と「ES」、そしてISの3車種。旗艦セダンのLSは2017年1月に、最量販セダンのESは2018年4月にそれぞれ全面改良を実施した。PFは、トヨタの新設計思想である「TNGA」に基づく新世代品を採用した。ESは12年に発表した先代から約6年での刷新だった。
その事実を考えれば、13年の販売開始から7年がたつISが全面改良になっても不思議ではなかった。FR車向けの新PF「GA-L」はLSやトヨタのセダン「クラウン」などで量産の実績があり、ISに横展開することは可能だ(図2)。
それでもトヨタは、ISの部分改良を選択した(図3)。小型車の領域では特にSUVシフトが顕著で、セダンに開発リソースをふんだんに投入するのは難しいと判断したようだ。制約があるなかで新型ISは、上位車種だったGSやHSの受け皿になるように車両の大型化や走行性能の向上を部分改良で実施した。
車両寸法は全長4710×全幅1840×全高1435mm。部分改良前の車両と比べると、全長と全幅は30mm、全高は5mm長くなった。ホイールベースは2800mmで、PFを踏襲したため変更はない。