SUBARU(スバル)が2020年10月15日に発表した新型「レヴォーグ」の水平対向(ボクサー)ガソリンエンジンで、リーンバーン(希薄燃焼)を実現した(図1)。19年に開発したマツダに続く、“小兵”の面目躍如だ。筆頭株主のトヨタ自動車がエンジンの簡素化に注力する中、スバルは難しい燃焼技術を手中に収めて異なる道を模索した。一方、電動化戦略における新型機の位置付けが不明瞭で、迷いも感じる。
新型エンジンは、4気筒で排気量1.8LのCB18型。現行車に搭載する1.6LのFB16型に比べて排気量を増やし、最大トルクを2割増の300N・mと大きくした(図2、3)。これほどトルクを大きくしながらも燃費性能を約4%高めて16.6km/L(17インチタイヤ、JC08モード)にできたのは、驚異的である。エンジンの最大熱効率は40%の大台に達し、業界のトップ水準である。
リーンバーンとは、燃料と空気の混合気において、空気の質量を増やした希薄な状態で燃焼させること。希薄にするほど、熱効率を上げやすくなる。スバルの新型機は、希薄さの程度を示す空気過剰率注)が2に達することがあるとし、通常のガソリンエンジンの2倍まで薄くできた。一方、希薄にすると着火しにくくなる。スバルは燃焼技術に工夫して、広い実用走行域でのリーンバーンを実現した。エンジン回転数で2400rpm以下、負荷率で約35%以下をカバーする。
スバルがリーンバーンに着目したのは、同社の象徴といえる水平対向ガソリンエンジンを将来にわたり存続させるためだ。同エンジンの大きな課題である燃費性能を高めて、二酸化炭素(CO2)排出量を減らす。世界で厳しくなるCO2排出量規制に備える。
加えてモーターやインバーターなどの電動化技術でトヨタに頼り独自性を発揮しにくい中、エンジンで存在感を示したい考えもありそうだ。トヨタが出資するマツダと、くしくも似た戦略になった。トヨタはどちらかといえばエンジンは簡単な構成にとどめ、電動化技術を重視することで燃費性能の向上を図っている。