三菱電機は、カメラで撮影した映像などを基に対話型の経路案内ができる技術を開発した。同技術をカー・ナビゲーション・システムに使うと、運転者が理解しやすい経路案内を提供できる。予防安全性能の向上にも寄与する。人と機械が自然な言葉で円滑に意思疎通できる同社の技術を用いて実現した。
現行のカーナビの経路案内では、GNSS(全地球測位システム)経由で取得した自車の位置情報と、カーナビに内蔵した地図データを使う。地図データに含まれている情報しか使えないため、音声の経路案内では「50m先を右に曲がってください」、「この交差点を右折です」といった運転者が直感的に理解しにくい内容のものが多い。
今回の新技術を用いたシステムでは、カーナビの地図データに含まれていない目標物を利用した経路案内ができる。具体的には、カメラで取得した画像情報などを基に、(1)前方の黒いクルマに続いて左折してください、(2)郵便ポストの手前で右折してください─といった運転者が理解しやすい経路案内が可能になる(図1)。
目標を見落とすと別の言葉で案内
運転者が目標を見落とした場合には案内の内容を変更し、別の言葉で言い直す。例えば、システムが「前方のグレーのクルマに続いて左折してください」と案内したときに、運転者が「そのクルマが見つからない」と回答すると、「左側を走行するクルマです」といった形で案内の内容を変更する。
先進運転支援システム(ADAS)の高度化にも寄与できる。具体的には、(1)左から歩行者が道路を渡ろうとしている、(2)左から自転車が横切ろうとしている、(3)対向車線から来るバスに注意─といった警告を音声で出せるようになる(図2)。
こうした対話型の経路案内や音声による注意喚起を可能にしたのが、三菱電機が開発した「Scene-Aware Interaction」という技術である。入出力のデータだけで学習できる「End-to-End深層学習」注)というAI(人工知能)技術を用いて開発した。