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 トヨタ自動車の小型SUV(多目的スポーツ車)「ヤリスクロス」は側面衝突に対応するため、ベース車両である小型車「ヤリス」とは異なるセンターピラーの構造を採用した。小型車のヤリスは、センターピラーにホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)の一体成形品を使うが、小型SUVのヤリスクロスは、ホットスタンプと高張力鋼板の冷間プレス材を組み合わせる構造にした。両車の側面衝突の形態が異なるためである。

 ヤリスとヤリスクロスは、トヨタの車両開発手法「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づくBセグメント向けプラットフォーム「GA-B」を適用する(図1)。衝突安全に対するボディー設計の考え方は基本的に同じだ。車両寸法が小さい小型車であっても、中大型車と同等の衝突安全性能を確保するというものである。

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(b)
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図1 小型SUVの新型「ヤリスクロス」
(a)新型車と(b)ボディー。新型車はベース車両のヤリスと同じプラットフォーム「GA-B」を適用した。(出所:トヨタ自動車)

 こうした考え方に基づき、例えば側面衝突への対応では、乗員室を変形させないために、ボディー側面の骨格に高強度の高張力鋼板を使う。さらに、側面骨格のうち前席の開口部に、引っ張り強さが780MPa級以上の「超高張力鋼板」を適用する。

 ただ、側面衝突への対応で特に重要となるセンターピラーについては、「ヤリスとヤリスクロスで、異なる手法を採用した」と、トヨタ自動車東日本第3ボデー設計部第4ボデー設計室で2Gグループ長の田中一秀氏は言う。その理由は、両車の車高の違いである。

車高の差で衝突位置が異なる

 ヤリスクロスは、ヤリスより全高が60mm高い。側面衝突試験でぶつける物体(台車など)が同じ高さであれば、相対的な衝突位置はヤリスクロスの方がヤリスより低くなる。具体的には、ヤリスではセンターピラー下部、ヤリスクロスではサイドシルとセンターピラーの結合部あたりが衝突位置になる場合が多い。このように、ヤリスクロスは相対的に衝突位置が低くなるため、ヤリスと異なるセンターピラーの構造を採用した。

 ヤリスでは側面衝突時の衝撃荷重を、主にセンターピラーで受け止める。衝突時に乗員室を変形させないため、同ピラーには引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプの一体成形品を使った。フロントピラー上部も1.5GPa級のホットスタンプを使い、サイドシルとルーフ・サイド・レール(ルーフレール)は1.2GPa級の冷間プレス材である(図2)。

図2 ヤリスの高張力鋼板の使い方
図2 ヤリスの高張力鋼板の使い方
センターピラーにホットスタンプの一体成形品を使う。骨格の結合強度を高めるため、破線の円内はスポット溶接の打点数を従来の2倍に増やした。トヨタの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 これに対してヤリスクロスは、側面衝突時の衝撃荷重を主にサイドシルで受け止める。サイドシルから伝わる衝撃荷重を、センターピラーの根元で効率的に吸収するため、同ピラーの根元に440MPa級の冷間プレス材を使った。衝突の衝撃で根元が折れないようにする狙いもある。根元以外は1.5GPa級のホットスタンプであり、2つの部品をプレス成形した後に溶接して製品にする。