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 帝人は、異種材料で構成する電動車両向けの電池ボックスを開発した。同ボックスの構成材料として高張力鋼板とガラス繊維強化樹脂(GFRP)を使い、軽さと高強度を実現した。電池ボックスの強度と質量は、オールアルミニウム(Al)合金製ボックスと同等にできるという。電気自動車(EV)の普及が進む中国や欧州の自動車メーカーに照準を合わせ、2025年にも量産開始を目指す。

 厳しくなる世界の燃費規制に対応するため、車両の電動化が加速している。EVなどの電動車両では航続距離を延ばすために、軽量化は重要なテーマである。ボディーだけでなく、電池パックを格納する電池ボックスにも軽量化が求められている。

 ただ、電池ボックスは軽量化に加えて、衝突時の衝撃から電池パックを守る衝突安全性の確保も必要になる。現在、EVなどの電池ボックスは主に、鋼材やAl合金などの金属材料が使われている。これにより、ボックス自体の強度を確保している。

GFRPが現実的な選択肢

 これに対して帝人が試作した異種材料構成の電池ボックスは、高張力鋼板とGFRPを使った。炭素繊維強化樹脂(CFRP)は採用していない。自社が持つ炭素繊維(CF)などにこだわらず、ガラス繊維(GF)や高張力鋼板を他社から調達した。

 CFRPはGFRPより軽量化効果が大きいが、強化繊維に使うCFはGFより材料コストが高いため、量産車への採用のハードルが上がる。帝人で複合成形材料事業本部長を務める内川哲茂氏は、「価格性能比から考えて、コストの増加を抑えやすいGFRPを使うのが現実的な選択肢と判断した」と言う(図1)。

図1 帝人複合成形材料事業本部長の内川哲茂氏
図1 帝人複合成形材料事業本部長の内川哲茂氏
「価格性能比から考えて、コスト増加を抑えやすいGFRPを使うのが現実的な選択肢と判断した」と言う。(出所:帝人)
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 帝人が試作した電池ボックスは、特に強度が必要なフレーム(外枠)に高張力鋼板(引っ張り強さは1.0GPa以下)、軽さを重視するトレイ(底板)やカバー(蓋)にGFRPを適用した。

 同ボックスの寸法は長さ約2220×奥行き約1560×高さ約167mmで、質量は150kg。同じ形状のオールAl合金製ボックスと質量は同等で、オール鋼材製のボックスより約15%軽い。電池ボックスとしての強度は、オールAl合金製ボックスと同水準を確保できているという(図2)。

図2 帝人が試作した電池ボックス
図2 帝人が試作した電池ボックス
同じ形状のオールAl合金製ボックスと質量は同等で、オール鋼製のボックスより約15%軽い。帝人提供の写真を基に日経Automotiveが作成。
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 GFRP製の部位は、既に量産技術として確立している「SMC(シート・モールディング・コンパウンド)工法」で造った。短く切断した短繊維のGFをシート状に広げ、熱硬化性のマトリックス(母材)樹脂を含浸させる。このシートを金型にセットし、加熱して母材樹脂を硬化させながらプレス成形する。プレス成形後に金型から取り出して(離型して)製品にする。シートを金型にセットしてから離型するまでの時間(成形時間)は約3分。自動車メーカーの量産ラインに対応できる水準である。