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 オランダ化学大手のRoyal DSMは、高機能樹脂「PPS(ポリフェニレンサルファイド)」の日本における販売を強化する。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の電池パックやFC(燃料電池)スタックなどの部品に照準を合わせ、日本の自動車メーカーや部品メーカーに売り込む。

 DSMがPPS樹脂注1)の販売を強化するのは、(1)電動車両の電池パックの熱管理システム、(2)充電関連の高電圧・高電流システム、(3)FCスタック向けの部品である。

注1)PPS樹脂は結晶性の熱可塑性樹脂であり、耐熱性や耐摩耗性、耐薬品性などに優れる。「高温下での機械的物性の低下が少ない」「流動性が高いため成形性に優れる」といった特徴もある。ただ、成形時の結晶化度が物性に大きく影響するため、成形条件の精密な管理が必要になる。

 このうち電池パックは、一定の温度領域(20~30度)を外れると性能が低下する。その熱管理システムの部品は長時間、冷却材にさらされる。パイプなどの冷却用部品はアルミニウム(Al)合金やゴムなどが使われている場合が多いが、「樹脂化による軽量化が求められている」(DSM日本法人のDSMエンジニアリングマテリアルズでコマーシャルディレクターを務める高雄良平氏)と言う。

EVやFCVの部品に照準

 ただ、これらの部品を樹脂化する場合、射出成形時の「ウエルドライン」注2)の発生による成形不良を防ぐ必要がある。DSMのPPS樹脂は、冷却水(水とグリコールの混合液)に長時間さらされた後のウエルドラインの引っ張り強度が従来品に比べて85%、破断伸びが同50%高い。

注2)ウエルドラインとは、金型内で溶融樹脂の合流部分に発生する線状の跡のことで、強度低下の原因となる。

 また、電池パックの性能を十分に引き出すには、高電圧・高電流の充電システムが必要になる。特に、車載コネクターや充電プラグの高電圧/高電流下における耐熱衝撃性の向上は重要項目である。高い難燃性も求められる。同社のPPS樹脂は難燃性に優れ、従来品と比べて耐熱衝撃性が3~4倍高いという。

 一方、FCスタックにおいて冷却水を流すパイプなどには、PA(ポリアミド)6樹脂やPA66樹脂などが使われている。ただ、これらの樹脂は吸湿性が高い。加水分解や熱劣化、イオン溶出の問題もある。特に、イオン溶出はFCスタック内のメンブレンのピンホール損傷や閉鎖の原因となる()。同社のPPS樹脂は吸湿が少なく、加水分解や熱劣化に対する耐性を保ち、従来品に比べてイオン溶出が少ないことを確認しているという。

図 燃料電池の仕組み
図 燃料電池の仕組み
イオン溶出はFCスタック内のメンブレンのピンホール損傷や閉鎖の原因となる。(出所:DSM)
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