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 帝人は、超小型電気自動車(EV)のスタートアップ企業である豪Applied EV(AEV)と共同で、ポリカーボネート(PC)樹脂製のソーラールーフを開発した。太陽電池モジュールを内蔵した同ルーフで作った電力をリチウムイオン電池パックに蓄えることで、超小型EVの航続距離を最大で約30%延ばせるという。両社は2022年後半に、世界の主要都市での実用化を目指す。

 EVの航続距離を延ばすには、(1)搭載する電池パックの総電力量(容量)を増やす、(2)電池の容量が減ったときにエンジンで発電機を動かして充電する─といった方法がある。ただ、こうした方法は車両寸法が大きいEVでは有効だが、軽自動車より車両寸法が小さく、低価格が求められる超小型EV注1)に適用するのは難しい。

注1)超小型EVは、LS-EV(Low Speed Electric Vehicle:低速EV)とも呼ぶ。帝人とAEVは、車速40km/h~45km/h で走行する車両を想定する。日本では20年に国土交通省が、車速60km/h以下で走る超小型モビリティーの仕様を作成した。

ガラス製ルーフより約30%軽い

 帝人の樹脂事業本部開発・技術生産部門で樹脂グレージング開発部長を務める帆高寿昌氏は、「大きな電池パックを搭載せずに(搭載する電池パックの容量を増やさずに)航続距離を延ばすため、軽量化が可能なPC樹脂製ソーラールーフをAEVと共同開発した」と言う。ルーフの軽量化も、航続距離の延長に寄与する(図1)。

図1 PC樹脂製のソーラールーフ
図1 PC樹脂製のソーラールーフ
中間層の太陽電池セルを、2枚のPC樹脂パネルで挟んだ3層構造になっている。PC樹脂パネルと太陽電池セルは、接着剤で貼り合わせた。(出所:帝人)
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 帝人とAEVが共同開発したPC樹脂製ソーラールーフは、中間層の太陽電池セルを2枚のPC樹脂パネルで挟んだ3層構造になっている。同ルーフの質量は約12kg。太陽電池セルの構造が同じガラス製のソーラールーフに比べて30%弱軽い。また、同ルーフに搭載した太陽電池セルの出力は、オーストラリア(豪州)の晴天下における実験において、一般的なソーラーパネルと同等の約330Wを記録したという。

 また、熱可塑性のPC樹脂は射出圧縮(プレス)成形機で一体成形できるため、ガラス製ルーフよりも形状の自由度が大きい。射出圧縮成形とは、あらかじめ金型を少し開いた状態で溶けたPC樹脂を金型に充填し、金型を閉じながら加圧して成形する手法。「成形後のルーフの強度は、ガラス製ルーフと同等にできている」(帆高氏)と言う。