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 ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)や米Tesla(テスラ)を中心に、電気自動車(BEV)の開発が加速している。その裏で注目を集めているのが「グリーン水素」「グリーンアンモニア」「合成燃料(e-fuel)」「バイオ燃料」などのカーボンニュートラル(CN)燃料である(図1、2)。

図1 ドイツPorscheと米ExxonMobilは2022年からe-fuelを利用したレースを開催する
図1 ドイツPorscheと米ExxonMobilは2022年からe-fuelを利用したレースを開催する
現在はバイオ燃料を用いている。(出所:Porsche)
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図2 e-fuel
図2 e-fuel
(出所:Audi)
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 同燃料の商用化を目指し、欧州を中心に世界中で研究開発プロジェクトが乱立し、投資が拡大している。BEVだけでは、2050年に運輸部門のカーボンニュートラルを達成することは不可能とみられているからだ。

 CN燃料が普及すれば、既存のエンジンはカーボンニュートラルなパワートレーンの1つとして生き残る。ガソリン相当のCN液体燃料40Lのエネルギー密度は、米Tesla(テスラ)「モデル3」の約60倍に達する。移動体のエネルギーとして、これほど利便性の高いものはない注1)

注1)地球環境産業技術研究機構(RITE)が21年5月、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」で示したように、50年に日本でカーボンニュートラルを実現するには、水素、アンモニア、e-fuel、バイオ燃料などの国内生産に加え相当量の輸入と、国内外でのCCS(二酸化炭素(CO2)の回収・貯留)は避けられない。

 ただし、CN燃料に対しては生産量やコストが商業的に成立する水準に達するのかという疑念の声がある。どんな課題があり、解決の見通しはあるのか。主要なCN燃料である水素、アンモニア、e-fuel、バイオ燃料のうち、既存のエンジンの行方を大きく左右するのはe-fuelとバイオ燃料である。本稿では最近注目を集めるe-fuelの最新動向を解説する。