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 自動車のタイヤとハンドルを機械的につなぐことなく、電気信号でタイヤ角を変えるステア・バイ・ワイヤ(SBW)─。本命の「軸なし」技術の実用化が目前だ(図1)。トヨタ自動車系のジェイテクトが、先陣を切って量産にこぎ着ける見通しである。ドイツ部品大手のSchaeffler(シェフラー)が追いかける。自動運転車に必須の技術とされ、開発競争が本格化し始めた。

図1 ステア・バイ・ワイヤのイメージ図
図1 ステア・バイ・ワイヤのイメージ図
操舵(そうだ)ユニットと転舵ユニットを機械的な接続ではなく、電気信号で接続する。2013年に日産自動車が世界で初めて実用化した。(出所:ジェイテクト)
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 トヨタが2022年半ばまでに発売予定のEV「bZ4X」にSBWを搭載する。ジェイテクトの開発品が採用されるとみられる。シェフラーは、福祉車両などに改造するための後付けSBWを長年手掛け、レーシングカー向けにも開発を進めてきた。25年から自動車大手の量産車向けに少量生産を開始し、26年から27年までの間に規模を拡大する計画だ。

 これまで日産自動車が13年から「スカイライン」にSBWを採用していた。ただしハンドルとタイヤの間に、クラッチを備えたステアリング軸を残し、電気系統の失陥時はクラッチをつなぐことで安全性を高める機構だった。軸を残したことで配置の自由度が下がり、一般的な電動パワーステアリング(EPS)に対する利点は少なくなる。

 一方でジェイテクトやシェフラーが手掛ける軸なしSBWは、ステアリング軸を完全になくしながらも十分な安全性を確保できるのが特徴である。