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 オランダ化学大手Royal DSMが開発したバイオマス(植物由来)ポリアミド(PA)樹脂が、自動車部品に採用された。ベアリング世界大手の日本精工(NSK)が、転がり軸受保持器にDSMの同樹脂を使った。石油由来PA樹脂製保持器と同等の性能やコストなどを実現したことが採用の決め手になった。

 DSMの日本法人であるDSMエンジニアリングマテリアルズ(DSMジャパン)で日本・韓国・東南アジア地域のコマーシャルディレクターを務める高雄良平氏は、「自動車メーカーや自動車部品メーカーから最近、植物由来樹脂を使って部品の製造工程における二酸化炭素(CO2)排出量を減らしたいという声が高まっている」と明かす。

 ただ一般的に、従来の植物由来PA樹脂は石油由来のPA樹脂に比べて、機械的特性や耐熱性、耐久性などが劣るという課題があった。また、樹脂の製造工程におけるCO2排出量の削減効果が限定的という制約もあった。DSMの植物由来PA樹脂はこれらの壁を乗り越えたことで、NSKの転がり軸受保持器に採用された(図1)。

図1 植物由来PA樹脂製の転がり軸受保持器
図1 植物由来PA樹脂製の転がり軸受保持器
機械的特性や耐熱性、耐久性などが劣るという課題や、製造工程におけるCO2排出量の削減といった壁を乗り越えたことで、NSKの転がり軸受け保持器に採用された。(出所:NSK)
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マスバランスの手法を適用

 DSMの植物由来PA樹脂「EcoPaXX B-MB PA410(以下、新製品)」は、トウゴマから抽出した「ひまし油」由来の成分(セパシン酸)と、石油由来の成分(ジアミノブタン:DAB)が原料である。その配合比率はセパシン酸が72%、DABが28%となっている。2つの原料を重合して同樹脂を作る(図2)。

図2 植物由来PA樹脂の構造
図2 植物由来PA樹脂の構造
トウゴマから抽出した「ひまし油」由来の成分(セパシン酸)と、石油由来の成分(ジアミノブタン:DAB)を重合して製品を作る。(出所:DSMジャパン)
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 このうち、石油由来のDABの部分に、「マスバランスアプローチ(物質収支方式)」という手法を適用した。石油由来の原料に植物由来の原料を一定の比率で混ぜると、その原料で作った製品が「100%植物由来」と国際認証されるものである注1)

注1)ここでいう国際認証とは、「ISCC(International Sustainability and Carbon Certification:国際持続可能性カーボン認証)Plus」のこと。全世界のバイオ製品などを対象にしている。

 DSMの新製品は、木の屑(くず)から抽出した「トール油」を使ってバイオベースのモノマーを作る。次に、DABの配合比率(28%)のうち10%を、このモノマーに置き換えた。その結果、「第三者機関から100%植物由来(28%マスバランスアプローチ)の認定を受けた」と、DSMジャパンでリージョナルプロダクトマネージャーを務める王 賽男氏は話す。機械的強度などの性能は、同手法を適用しない場合と変わらないとする()。

表 植物由来PA樹脂と石油由来PA樹脂の物性比較
植物由来PA樹脂の性能は、マスバランスアプローチを適用しない状態の値。同アプローチの適用後も物性は変わらないという。DSMジャパンの資料を基に日経Automotiveが作成。
表 植物由来PA樹脂と石油由来PA樹脂の物性比較
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