ドイツInfineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)の日本法人であるインフィニオンテクノロジーズジャパンは2022年1月、次世代の車載マイコン「AURIX TC4x」ファミリーを発表した。すでに先行顧客向けに28nm世代品をサンプル出荷中とする。
同社の車載マイコンは「TriCore(トライコア)」と呼ぶ独自のCPUコアを搭載する。同コアは1999年に誕生し、これまでに累計約8億4500万個のチップを出荷した実績がある。このうち、約3億2000万個をAURIXマイコンが占める。22年末までには、TriCore搭載チップの数は「約10億個に達する見通し」(インフィニオンテクノロジーズジャパン オートモーティブ事業本部マイコン製品担当シニアダイレクターの赤坂伸彦氏)という(図1)。
AURIXマイコンの最新世代となるTC4xファミリーは、「TriCore v1.8」と呼ぶ強化版のCPUコアを新たに採用した(図2)。前世代のコアに比べて性能を約60%高めたほか、仮想化機能(ハイパーバイザー)を搭載した。最大6コアまで用意し、コアごとに最大8台の仮想マシンを構築できるため、理論上は1つの車載マイコンで最大48台の仮想マシンを動かせる。OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新にも対応する。
これにより、複数のECU(電子制御ユニット)機能を統合した「ゾーンECU」などを実現しやすくなった(図3)。パワートレーンやシャシー、ADAS(先進運転支援システム)など、これまでAURIXがターゲットとしてきたアプリケーションに加え、「ゾーンECUへの搭載も狙う」(同氏)という。
次世代車では車両の前後左右など、領域ごとにゾーンECUを配置する新たな電気/電子(E/E)アーキテクチャーが検討されている。各ゾーンECUを束ねるセントラルECUに使うことも可能とする。ただ、その場合は車載SoC(System on Chip)と組み合わせるコンパニオンチップとしての用途を想定する。