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 デンソーが第2世代の小型ステレオカメラで攻勢を強めている。従来の第1世代ステレオカメラに対してコストと寸法を同等に抑えながら、機能を進化させたのが特長だ。機能進化の最大のポイントは、単眼処理用チップを搭載して1台のカメラでステレオ認識と単眼認識を実現したこと。単眼認識によって、ステレオ認識だけの従来カメラに比べて最大検知距離を約2倍に延ばした。

 デンソーの第2世代の小型ステレオカメラは、軽自動車や小型車の先進運転支援システム(ADAS)に向けたものである。第1世代の小型ステレオカメラに比べて、夜間歩行者を検知する自動ブレーキなど対応できる機能を増やした注1)

注1)デンソーの量産車向けADASには、単眼カメラとミリ波レーダーを使うセンサーフュージョンシステムの「Global Safety Package(GSP)」もある。最新の第3世代システム「GSP3」は、トヨタ自動車の新型ミニバン「ノア/ヴォクシー」などに採用されており、交差点における出合い頭衝突や、高速道路の単一車線における「ハンズオフ」走行などに対応する。

 同社の小型ステレオカメラの第1世代品は2016年に、ダイハツ工業の先代軽自動車「タント」に採用された。19年には第1世代の改良版が、ダイハツの車両設計・開発手法「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を適用した現行タントに搭載された。

 第1世代品を使うダイハツのADAS「スマートアシストIII」では、主要機能である自動ブレーキは昼間の車両と歩行者に対応していた。第1世代品の改良版を使うADAS「次世代スマートアシスト」は、改良前のシステムよりも提供する機能を増やしたが、自動ブレーキは夜間歩行者に対応していなかった。

寸法を変えずコストは同等

 第2世代品は、ダイハツの軽自動車「タフト」(20年6月発売)から採用が始まった。その後、小型車「トール」の部分改良車(20年9月発売)や、同「ロッキー」の部分改良車(21年11月発売)に搭載された注2)。最近では、軽商用車の新型「ハイゼットカーゴ」や「同トラック」、「アトレー」(3車種ともに21年12月発売)にも使われている(図1)。

注2)21年11月に発売したロッキーの部分改良車は、シリーズ式ハイブリッド機構「e-SMART HYBRID」を初搭載した。
図1 ダイハツの商用軽自動車「アトレー」
図1 ダイハツの商用軽自動車「アトレー」
デンソーの第2世代ステレオカメラを搭載し、予防安全性能を強化した。(撮影:日経Automotive、ステレオカメラの画像はデンソー提供)
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 前述したように第2世代品の特長は、第1世代品と比べて最大検知距離を約2倍に延ばしたことに加え、(1)夜間歩行者を検知できるようになったこと、(2)認識できる対象物を増やしたことなどである(図2)。機能を向上させながら、カメラの寸法は第1世代品と変えず、コストも同等に抑えた。

図2 夜間性能などの機能も向上
図2 夜間性能などの機能も向上
(a)自動ブレーキの夜間性能を高めたほか、(b)昼間の自転車に対する衝突回避や4種類の道路標識の認識、ガードレールや側壁の検知による路外逸脱警報などが可能になった。デンソーの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 例えば、第2世代品を搭載する現行ロッキーのADASは、ダイハツ車として最多の19機能を提供する()。部分改良前のロッキーのADASが提供するのは17機能だった。

表 現行ロッキーに搭載するADASの19機能
ダイハツ工業の資料を基に日経Automotiveが作成。
表 現行ロッキーに搭載するADASの19機能
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 また、商用軽のハイゼットカーゴと同トラックのADASでは、夜間歩行者対応の自動ブレーキや車線逸脱抑制、路側逸脱警報、ふらつき警報、標識認識機能などの13機能を提供する。アトレーの場合は13機能に加えて、全車速対応の先行車追従(ACC)と車線中央維持支援(LKC)の2機能も搭載した(図3)。

図3 全車速対応ACCのイメージ
図3 全車速対応ACCのイメージ
(1)先行車がいない場合は、事前に設定した速度で定速走行、(2)先行車を検知すると減速し、先行車に合わせて停止、(3)先行車が発進した場合は、専用ボタンを押すことで(あるいはアクセルペダルを踏むことで)、追従走行に戻る、(4)設定した速度より遅い先行車がいなくなると、設定速度まで加速して定速で走行する。(画像:ダイハツ工業)
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