日産自動車は中型SUV(多目的スポーツ車)「エクストレイル」の全面改良車を、2022年7月に日本で発売した。先代車(2013年12月発売)は、アライアンス(日仏3社連合)共通プラットフォーム(PF)の「CMF(Common Module Family)-C/D」を初めて適用した車両である。全面改良した新型車も同じPFを適用するが、先代車のボディー骨格を改良して衝突安全性能を強化した。
今回の新型車では、ボディー骨格の構造を改良したことに加え、ホットスタンプ材(高張力鋼板の熱間加工材)を骨格に使うことなどで、全方位(前面・側面・後面)の衝突安全性能を向上させた(図1)。また、骨格へのホットスタンプ材の適用と、ドアなどの外板にアルミニウム(Al)合金を採用することで、約65kgの軽量化に成功した。ボディーの軽量化は、燃費の低下を抑えることに寄与した。
新型車は日産のシリーズ方式のハイブリッド機構「e-POWER」を全車に搭載した。発電用のエンジンには、排気量1.5Lで直列3気筒のVCR(可変圧縮比)直噴過給ガソリンエンジンを選択した。同エンジンを採用することで、高速走行時に燃費が悪化するといった従来のe-POWERの課題を克服した。
200kg重くなった新型車
ただ、e-POWERを搭載した新型車は、先代のガソリン車よりも車両質量が約200kg重くなった。そのため、先代車のボディー骨格のままでは、全方位の衝突安全に対応するのが難しかった。衝突安全性能を高めるために新型車では、先代車に比べてボディー骨格への高張力鋼板の使い方を変えた。
先代車のボディー骨格に使う高張力鋼板は、引っ張り強さが980MPa級の冷間プレス材が最高強度だった。特に強度が求められる骨格の部位に980MPa級を適用した。ホットスタンプ材は使っていなかった。これに対して新型車では、センターピラーとフロントピラーのレインフォースメント(補強材)やルーフ・サイド・レールに、1.5GPa級のホットスタンプ材を適用した(図2)。