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 スズキが、外観の樹脂パネルを接着する新技術を開発した。熱による体積変化が少ないのが特長で、軽自動車「スペーシア」の第4弾モデルに初採用した。

 まずは2台のクルマを見比べてほしい(図1)。1台目は、スズキが2022年8月に発売した商用軽バン「スペーシア ベース」である。スペーシアシリーズの第4弾として登場した新型車だ。そしてもう1台が、同シリーズの標準モデル「スペーシア」である。

図1 スズキの新型商用軽バン「スペーシア ベース」(左)
図1 スズキの新型商用軽バン「スペーシア ベース」(左)
「スペーシア」シリーズの第4弾で、2017年12月に発売したベースモデル(右)から外観を変更した。(写真:日経Automotive)
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 パワートレーンは両車共通で、ボディー骨格も同じ。大きな違いは外観で、荷室側面のデザインを変えた。スペーシアではガラス窓だった部分を、スペーシア ベースでは樹脂製のクオーターパネルに置き換えた(図2)。

図2 ガラス窓から樹脂製パネルへ
図2 ガラス窓から樹脂製パネルへ
スペーシア ベースは「道具感を演出するため」(スズキ)、樹脂製のクオーターパネルを採用した。(写真:日経Automotive)
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 「道具感を演出するための変更だが、これが意外と大変だった」。こう振り返るのは、スペーシア ベースの開発を担当したスズキ四輪商品第一部アシスタントCEの小黒雅史氏である。

 窓ガラスと同じ形状の樹脂パネルを用意して貼り付けるだけでよさそうにも思えるが、そう簡単な話ではない。難易度を上げたのは、外気温の変化で膨張・収縮するという樹脂の特性である。樹脂パネルの体積が変われば、接着面が剥がれてしまうのだ。

 体積変化の少ない鋼板を使えば、ガラス窓と同様に接着して固定しやすい。だが、鋼板のパネルを製造するためには、金型を新規に用意する必要がある。年間販売台数が1万台と少ない車両のために、金型代として多額の投資するのは現実的ではない。このため、「樹脂でなんとかする」(同氏)という開発方針となった。樹脂パネルでも金型は必要だが、鋼板向けのものよりコストを抑えられると判断した。

 外観部品に樹脂パーツを適用すること自体は珍しくない。スズキ自身、バンパーやフェンダーなどに広く使ってきた。今回のクオーターパネルがこうした外観部品と違うのが、「膨張・収縮による体積変化の逃げ場がない」(同氏)ことだ。バンパーやフェンダーなどは、クリップなどを使ってボディーに取り付けている。このため、「部品が曲がることで体積変化を吸収できる」(同氏)のだ。

 一方のクオーターパネルはデザイン上、体積変化の逃げ場がない。しかもクリップ止めではなく、スペーシアの窓ガラスと同様に接着剤でぴったりと固定する必要があった。

 様々な制約の中でスズキが選んだのが、熱による体積変化が少ない樹脂を新たに採用することだった。同社は材料の詳細を明かさないが、「接着して使う樹脂パーツを外観部品に採用するのはスズキ初」(同氏)という。