日野自動車のエンジン不正の影響が、海外市場や親会社のトヨタ自動車にも広がっている。日野自はエンジン不正を巡ってオーストラリアで訴訟を起こされたほか、トヨタは日野自製エンジンを小型バスに搭載するのを断念した。
オーストラリアの物流事業者など2社は2022年9月、日野自のエンジン不正で損害を受けたとして、同国ビクトリア州上級裁判所で、同社とオーストラリア販売子会社のHino Motor Sales Australia(HMSA)を相手に訴訟を起こした。日野自のエンジン不正は米国でも訴訟問題に発展しており、海外で2例目となる。
原告の2社はオーストラリアで2003年1月1日から2022年9月30日までに日野自のトラックを購入・貸借した事業者などを代表し、集団訴訟を起こした。同社がエンジンの排ガス・燃費性能を改ざんしていた影響で、損害を受けたと主張しているという。
HMSAによると、原告らは同社と日野自に対して損害賠償を請求しているが、具体的な請求額は明らかになっていない。日野自は「訴状の正式な送達があれば、HMSAとともに原告らの主張や請求内容を精査したうえで適切に対処していく」としている。
2022年8月には米国で、日野自のトラックを購入・賃借していた物流事業者などが、日野自とトヨタなどを相手に集団訴訟を起こし、損害賠償や懲罰的賠償、売買契約の取り消しなどを求めていた。日野自は今後も「当社や子会社、関係会社が同種の訴訟を提起される可能性がある」としている。
日野自はオーストラリア市場で同年8月2日以降、一部車種の出荷を止めている。同社によると、オーストラリアではエンジン認証に関わる代替法規として日本や欧州の法規を適用できる。このため、日本での法規認証に基づいてオーストラリアで販売していた中型トラック「500シリーズ」の一部モデル注)と小型バス「ポンチョ」が出荷停止中という(図1)。