全1472文字
PR

 米Cerence(セレンス)は2022年10月、AI(人工知能)と音声を使って車外でクルマと対話できるシステムを開発したと発表した。同社の音声認識や自然言語理解(NLU)、音声合成(TTS)、音声信号の強化、音声バイオメトリクス(声紋認証)などの技術と、マイクを用いて、車外から様々な音声操作を可能にするものである。セレンスが持つ現行の技術を組み合わせて実現した。

 「レベル4」以上の自動運転が普及すると、クルマの使い方が変わるとセレンスはみている。車内だけでなく、車外でクルマと対話する機会や、音声によって車外からクルマを操作する機会が増えるという。それに伴い、車外マイク(クルマの外に装着したマイク)の搭載台数も拡大すると予想する。

 同社の日本法人「Cerence Japan(東京・港)」のRegional VP(日本法人代表)である松尾大樹氏は、「AIと音声を活用して、クルマの操作すべてをコントロールすることが目標」と話す。現在、開発したシステムを国内外の自動車メーカーに提案中であり、「できるだけ早い時期の採用を目指す」(同氏)と述べる。

4つのAI技術を利用

 現在セレンスは、AIを活用した12の技術を持つ(図1)。このうち、今回開発したシステム「Cerence Exterior Vehicle Communication(CEVC)」には(1)WuW、(2)Voice Biometry、(3)Cerence Assistant、(4)SSE Multi-Zone─という4つのAI技術を使う。

図1  AIを活用したセレンスの技術
図1  AIを活用したセレンスの技術
音声認識や音声対話など12の技術を保有する。(出所:Cerence)
[画像のクリックで拡大表示]

 第1の技術は音声認識、第2の技術は声紋認証、第3の技術は音声アシスタント、第4の技術は音声信号処理の役割を担う()。

表 新システムで使う4つの技術
WuWとVoice Biometry、Cerence Assistant、SSE Multi-Zoneという4つの技術を使う。Cerence Japanの資料を基に日経Automotiveが作成。
名称 機能 採用技術
Cerence Tour Guide 音声ツアーガイドアプリ
WuW 音声認識ウェイクワード機能
Just Talk 音声認識Just Talk機能(ウェイクワード無し)
Swype 文字入力
Cerence Car Life 音声対話Car Manual&Q&Aアプリ
Voice Biometry 声紋認証
Cerence Sing カラオケアプリ
Cerence Assistant 音声アシスタント
ICC Multi-Seat 車内での会話
SSE Multi-Zone 音声信号処理(ノイズキャンセリングやエコーキャンセリングなど)
EVD 緊急車両の接近告知
Proactive AI プロアクティブ音声対話機能

 例えば、無人運転タクシー(ロボタクシー)を利用したいユーザーは、車外マイクを介してクルマに話しかけると、走行予定ルートや予想される到着時間などの情報を音声で入手できる。乗車する前に直接クルマと対話できる機能は、無人運転タクシーの利便性や信頼性の向上に寄与する。

 ロボタクシーに加えて、「レベル5」の自動運転技術を活用したバレーパーキングや、駐車場所からの車両の呼び出しなどの操作を音声で行えるようにすることも想定する。