「人間の操作通りに動かすだけでは意味がない(不十分)。システムが間に入って助ける」。こう語るのは、日立Astemo(アステモ)技術開発統括本部次世代シャシー開発本部ジェネラルマネージャーの桐原建一氏である。同社は、そんなこだわりを持ってステア・バイ・ワイヤ〔ステアリングホイールのような操舵(そうだ)デバイスと車輪を機械的につながず電気信号で車輪を制御するシステム〕の開発を進めている。
その成果の1つが、操舵による緊急回避をより安全に行えるように支援する機能や、路面からの外乱で車両が左右に振られるようなケースで自動的に修正操舵をかける機能を盛り込んだステア・バイ・ワイヤの試作品だ(図1、2)。同社では、前者を「緊急回避操舵制御」機能、後者を「挙動補正制御」機能と呼ぶ。
同社によれば、人間の運転者が緊急時に操舵で危険を回避しようとすると、動き出しが遅れ、かつ曲がりすぎてしまいがちになる。同試作品では、そうした遅れや曲がりすぎを運転の熟練者並みに減らせる(図3)。
実は、「(ステア・バイ・ワイヤによって、操舵の)自動化を突き詰めていくと、人間(の運転者)よりも危険を素早く認知し安全に回避することが可能になる」(同氏)。だが同試作品では、熟練者並みの遅れや操舵量に緊急回避操舵の制御を抑えている。人間の運転者による走行を支援するという観点から、運転者がステアリングホイールを切ってからの制御開始としているためだ。自動運転に適用する場合は、危険を認知してすぐに制御に入れるので、さらに遅れを減らしたり曲がりすぎを抑制したりすることが可能になる。