ドイツBMWの日本法人は、高級セダン「7シリーズ」を部分改良し、2019年6月に販売を開始した(図1)。従来のモデルで採用していたステレオカメラを3眼カメラに変更した他、ドライバーモニタリングカメラを搭載したのが特徴だ。車線の維持や車両姿勢の制御、高速道路での渋滞時の追従機能を手放し状態でも可能とする制御など、より安全で高精度な運転が可能になる。
新型で採用した3眼カメラは、「3シリーズ」と同様に、3種類のカメラで近距離(最大20m程度)、中距離(同120m程度)、長距離(同300m程度)の撮影を分担する。従来の7シリーズで採用していたカメラは近距離から中距離を撮影するステレオカメラだったことから、従来よりも遠い範囲を撮影し、状況を分析する能力が加わったことになる。
把握可能な距離が延びたことで、同社が「エグゼクティブ・ドライブ・プロ」と呼ぶ運転支援機能の性能が向上したと、BMW日本法人でBMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティングのプロダクト・マネージャーの御舘康成氏は述べる。
エグゼクティブ・ドライブ・プロの機能は、車両が走行している際の車線を維持する機能に加え、車両姿勢の傾き(ロール)を制御する機能を組み合わせたもの。3眼カメラで認識した路面状況を処理して、路面の凹凸やカーブの緩急などを解析。車線の中央を車両が走行するように操舵(そうだ)を支援したり、電子制御サスペンションを調節して車両の姿勢を安定させたりする。
新型では、長距離を撮影するカメラが増えたことから、特にカーブにおける運転支援でより高精度な制御が可能になった。例えば、中距離では緩やかなカーブだが、その先に急なカーブが続くような場合である。従来のステレオカメラでは急カーブの認識が遅くなり、操舵や姿勢制御がぎこちなくなりがちだった。
他方、新型の3眼カメラの場合は、緩やかなカーブの先に急なカーブがあることを従来よりも早い段階で認識できる。そのため、急なカーブを見越した、より自然な車両の車線維持や姿勢制御を行える。
「BMWの車を購入する顧客は、カーブを走行する際の走行ラインを気にする人も少なくない。新型車では、運転者がより違和感を感じないラインを取れる」と御舘氏は述べる。