トヨタ自動車が2019年5月に部分改良した「レクサス」ブランドのスポーツカー「RC F」では、走行性能と応答性能の向上を目指し、様々な改良を施した(図1)。その1つのアプローチとして目を引くのが、外装部品で採用している整流フィン「エアロスタビライジングフィン」の採用と、主要部品の徹底的な軽量化だ。特に軽量化では、最上位モデルのパフォーマンスパッケージで、人間の1人分に相当する70kgを削減した。
レクサスでは初めてエアクリーナー注)に整流フィンを適用した(図2)。エアクリーナーホース側の出口となる円筒状の流路の内壁に整流フィンを設けた(図3)。
注)エアクリーナーは、吸気系に外気を取り込むインレットダクト(ラジエーターサポートの上部に配置)とエンジンのインテークマニホールドの間に配置する部品。空気に含まれた砂やちり、ほこりなどの異物を除去する役割を担う。エアクリーナーから出た空気は、エアクリーナーホースを介してインテークマニホールドへと導かれる。
一般に、管状の流路に空気を流すと、内壁との摩擦の影響で内壁付近に空気が流れにくい領域(境界層)ができる(図4)。境界層が厚いと、吸気系の圧力損失が高くなる上、流路の内壁から中央部にかけての流速の変化が激しくなる。流路内では中央部が最も空気が流れやすく、境界層が厚いと、最も空気が流れやすい領域が狭まるため、流速の変化が激しくなる。
整流フィンを設ける効果は、そうした境界層を薄くできることだ。流路の中央部のより幅広い領域で空気が流れやすくなることから前述の流速の変化を小さく抑えられる。その結果、圧力損失を減らせる上、同流路を流れる空気の流量をより高い精度で計測できるようになる。エアクリーナーの出口の流路には、エンジンの吸気系に送られる空気の流量を測るエアフローメーターを配置した。
圧力損失の低減により、エンジンへの吸気はより滑らかになりエンジンの応答性が高まる。さらに、空気の流量をより高い精度で計測できるようになることで、空気と燃料の混合比をより的確に調整できるようになり、低速でのエンジンの応答性を高められる。