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 トヨタ自動車が2019年5月に部分改良した「レクサス」ブランドのスポーツカー「RC F」では、走行性能と応答性能の向上を目指し、様々な改良を施した(図1)。その1つのアプローチとして目を引くのが、外装部品で採用している整流フィン「エアロスタビライジングフィン」の採用と、主要部品の徹底的な軽量化だ。特に軽量化では、最上位モデルのパフォーマンスパッケージで、人間の1人分に相当する70kgを削減した。

図1 趣味性の高い「スポーツ走行」に特化
図1 趣味性の高い「スポーツ走行」に特化
国内での販売台数が月に10~20台と少なく、「スポーツ走行」といった趣味性が高い顧客向けに特化した車だ。価格は消費税込みで最上位モデルが1404万円、ベースモデルでも1021万909円と1000万円を超える。写真は最上位モデルのパフォーマンスパッケージ。(撮影:日経Automotive)
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 レクサスでは初めてエアクリーナー注)に整流フィンを適用した(図2)。エアクリーナーホース側の出口となる円筒状の流路の内壁に整流フィンを設けた(図3)。

注)エアクリーナーは、吸気系に外気を取り込むインレットダクト(ラジエーターサポートの上部に配置)とエンジンのインテークマニホールドの間に配置する部品。空気に含まれた砂やちり、ほこりなどの異物を除去する役割を担う。エアクリーナーから出た空気は、エアクリーナーホースを介してインテークマニホールドへと導かれる。

図2 整流フィンを適用したエアクリーナー
図2 整流フィンを適用したエアクリーナー
写真の上部、出っ張った筒状の部分がエアクリーナーの出口。エンジンのインテークマニホールドに接続する。(撮影:日経 xTECH)
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図3 出口の流路内壁に設けた整流フィン
図3 出口の流路内壁に設けた整流フィン
流路内壁に整流フィンを設けている。流路内部を右から中央部に向けて突き出しているのがエアフローメーターの取り付け部。(撮影:日経Automotive)
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 一般に、管状の流路に空気を流すと、内壁との摩擦の影響で内壁付近に空気が流れにくい領域(境界層)ができる(図4)。境界層が厚いと、吸気系の圧力損失が高くなる上、流路の内壁から中央部にかけての流速の変化が激しくなる。流路内では中央部が最も空気が流れやすく、境界層が厚いと、最も空気が流れやすい領域が狭まるため、流速の変化が激しくなる。

図4 空気が流れる流路における境界層と流速分布
図4 空気が流れる流路における境界層と流速分布
整流フィンを設けないと境界層が厚く、流速分布が大きくなる。整流フィンを設けると、境界層が薄く、流速分布が小さくなる。(出所:トヨタ自動車)
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 整流フィンを設ける効果は、そうした境界層を薄くできることだ。流路の中央部のより幅広い領域で空気が流れやすくなることから前述の流速の変化を小さく抑えられる。その結果、圧力損失を減らせる上、同流路を流れる空気の流量をより高い精度で計測できるようになる。エアクリーナーの出口の流路には、エンジンの吸気系に送られる空気の流量を測るエアフローメーターを配置した。

 圧力損失の低減により、エンジンへの吸気はより滑らかになりエンジンの応答性が高まる。さらに、空気の流量をより高い精度で計測できるようになることで、空気と燃料の混合比をより的確に調整できるようになり、低速でのエンジンの応答性を高められる。