トヨタ自動車は2020年6月、7年ぶりに全面改良した中型SUV(多目的スポーツ車)「ハリアー」を日本で発売した(図1)。柔らかな光が差し込む車内空間を実現するため、前席から後席の頭上までを覆う調光ガラス製ルーフを搭載した。同ルーフを搭載するのは、トヨタ車として初めてである。
4代目となる新型車は、心地よい上質な車内空間を実現するため、ルーフにAGCの調光ガラスを採用した。調光時には、障子越しのような柔らかい光が車内に差し込む。
同社の調光ガラスは、2枚のガラスの間に液晶調光フィルムを挟んだ「合わせガラス構造」になっている。同フィルムは、機能性液晶フィルムメーカーである九州ナノテック光学(大分県日出町)が供給した。調光モードではまぶしさを和らげ、透過モードでは開放感のある車内を実現する。
調光モードと透過モードは、前席上の屋根に取り付けた専用ボタンで切り替える。スイッチを入れると透過モードになる。
2枚のガラスで挟んだフィルムには、微細な液晶をランダムに分散させている。この状態が調光モードで、外光が液晶で散乱されてガラスは不透明(曇り度は90%)になる。
フィルムに電圧をかけると、液晶が一定方向(ガラスの厚さ方向)に整列する。この状態が透過モードで、外光が透過してガラスは透明になる(図2)。
調光モードと透過モードのいずれの場合も、紫外線を99%以上、赤外線を90%以上カットする。音声認識機能も搭載した。トヨタのテレマティクスサービス「T-Connect」を利用すると、音声によって調光モードと透過モードを切り替えられる。