ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は2020年7月、小型SUV(多目的スポーツ車)の新型「T-Roc」を、日本で発売した(図)。同グループのプラットフォーム「MQB(横置きエンジン車用モジュールマトリックス)」を適用し、SUVとしての基本性能を高めた。さらに、日本市場で重視されている予防安全性能を強化した。
新型車は車格と価格帯から見て、VWの小型SUV「T-Cross」と中型SUV「Tiguan」の中間に位置する車両になる。入門モデルのT-Crossはガソリンエンジン車だけを設定し、上位モデルのTiguanはガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車を用意する。新型車はガソリン車を設定せず、ディーゼル車だけで日本市場を攻める。
使い方は入門モデルと異なる
なぜ新型車にガソリンエンジンを採用しなかったのか。その背景にはT-Crossとの使われ方の違いや、日本におけるTiguanの販売状況があるようだ。
入門モデルのT-Crossは、街を中心に走ることを想定して、ガソリン車だけを設定した。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりもコストが高くなり、最低価格が約300万円のT-Crossに搭載するのは難しかった。
これに対して新型車は街乗りに加えて、長距離ドライブなどでも使う場合が多いと想定した。そのため、ガソリンエンジンより動力性能が高く、長距離運転に適したディーゼルエンジン「2.0TDI」を選んだ。新型車の最低価格は約385万円であり、コスト面でT-Crossより搭載しやすい事情もある(表)。
また、VWの日本法人であるフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は、「上位モデルのTiguanの日本における販売台数のうち、約80%がディーゼル車になっている」という。新型車と使い方が似るTiguanの販売状況も、ガソリンエンジンを採用しないことを後押しした。