ホンダが2022年9月に発売した高性能ハッチバック「シビックタイプR」(図1)。新型は、ホイールを先代型の20インチから19インチに小径化した。昨今の新型車は、性能向上や見栄えを良くすることを目的に、ホイールを大径化させるのが主流だ。それではなぜ、新型シビックタイプRはあえてホイールを小径化したのか。そこには、“大衆車”「シビック」をベースとした高性能車であることが関係していた。
新型車はモデルチェンジをするたびにホイールを大径化する傾向にある。例えば、2022年9月に発売したトヨタ自動車の新型「クラウン」の一部グレードは、先代型の18インチから21インチに径を大きくした。同年7月に発売した日産自動車の新型「エクストレイル」の標準版の一部グレードも18インチから19インチに拡大した。
一般的に、ホイールを大径化してタイヤの扁平(へんぺい)率を低くすると、タイヤのたわみやねじれを低減でき、旋回性能や高速安定性が改善する。また、大径化することでホイールハウス内の車体とタイヤの間の空間が小さく見えることから、デザイン性に優れるとされている。通常は、後者を理由に大径化することが多い。クラウンの開発者も「デザイン性を優先して大径化した」と話す。
シビックタイプRも、先代型までは例外ではなかった。2009年と2010年に限定販売したFN2型は18インチ、2015年に限定販売したFK2型は19インチ、2017年に発売したFK8型は20インチとモデルチェンジを繰り返すたび、「タイヤの性能を上げるため大径化させてきた」とホンダ開発戦略統括部開発企画部開発企画二課チーフエンジニアの柿沼秀樹氏は話す。同氏によると「19インチに小径化の理由は3つある」という(図2)。