クルマにVHAを活用
VHAをクルマに活用すると、冒頭で述べたクルマの中の空間を大きく変えられる。クルマにVHAを活用するポイントは、「目的地があること」「常に現在地が変わること」「移動時間が発生すること」─の3点と考える。
まず、目的地があることにより、乗員はその場所の情報を求める。例えば、目的地の天気や交通状況などが挙げられる。さらに、現在地が刻々と変わることにより、VHAの収集する情報や乗員に伝える情報が常に変動する状態が発生する。それは、クルマから見た風景の映像や音声、近隣の場所に関する情報などである。特徴的な建物が見えたりすると、現在の位置情報と状況から、価値のある情報を提供できる(図2)。
これらを実際に行っている例として、観光バスのガイドが挙げられる。VHAによって「バーチャル・ヒューマン・バスガイド」のようなサービスが実現できると考えている。ひとり、あるいは複数の人がクルマに乗っている状態で、その空間に自然に溶け込んでコミュニケーションを行うものである注1)。
加えて、移動時間が発生することで、その時間を使って会話したり、勉強したり、遊んだりすることができる。また、人型である大きな特徴は、新たなコミュニケーションを生み出すきっかけになること。顔と体が表示されることで、人間から問いかけたり雑談したりすることはもちろん、VHA側から話しかけることも自然に行われる。この状態は「人間対人間」の意思疎通に近い。
自動運転が無人運転の「レベル5」に到達すると、車内空間は完全な「移動する部屋」となる。そうなると、車内空間における価値創造の期待はさらに高まる。車内空間は自分の家の中になり、映画やゲームなどの娯楽施設になり、学校や病院にもなるだろう。その中心的な役割としてVHAが行うことは多岐にわたる。