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ディープラーニング(深層学習)技術によって運転者の表情や声色の変化を認知して休憩を提案するなどの安全運転支援システムの開発が進む。米アフェクティバと同ニュアンス・コミュニケーションズの技術を活用したシステムの特徴や、今後の展開などについて解説する。(編集部)

 交通事故の多くは、人間のエラーによって発生している。その要因をなくすために、居眠り運転や注意散漫な運転、体調の急変など運転者の状態を検出する監視システムに注目が集まっている。日本では2018年に国土交通省が、運転者の体調急変時の対応を念頭に置いた「運転者異常時対応システム」の開発ガイドラインを発表した1)

 欧州の自動車アセスメントプログラム「Euro NCAP」では、2020年以降の安全性評価の対象に、運転者監視システムが追加される2)。また、米自動車技術者会(SAE)では、「レベル3」の自動運転時に作動継続が困難な場合に、システムからの介入要求に運転者が応答することが求められ、運転者が運転可能な状態にあることを把握する必要がある。

 車載音声対話システムを手掛ける米ニュアンス・コミュニケーションズ(Nuance Communications)は2018年9月、米アフェクティバ(Affectiva)と提携した注1)。高度な音声対話機能を持つオートモーティブアシスタント(車載向けバーチャルアシスタント)の開発フレームワークであるNuanceの「Dragon Drive」と、Affectivaの車載用センシングシステム「Affectiva Automotive AI」(Automotive AI)を組み合わせることにより、運転者や同乗者の認知状態や感情の変化に応じて音声対話が変化するユーザー体験の提供を目指す。

注1)Affectivaは感情AIのパイオニアで、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボからのスピンアウト企業。

 提携の成果として2019年1月にNuanceは米ラスベガスで開催された「CES2019」において、新たなソリューションを発表し、そのデモを行った。Dragon Driveで開発したオートモーティブアシスタントのプロトタイプに、車内カメラを使った運転者監視機能を組み込んだものである。

 このプロトタイプでは、車内カメラの映像からAutomotive AIが運転者の眠気や気分をリアルタイムで推定して数値化する。Dragon Driveはそのレベルに応じて適切に音声対話シナリオを変更させることで、より効果的な運転者への働きかけや、運転者の気分に合った情報を提供できる(図1)。

図1 運転者の表情から「眠気のレベル」を判断し、居眠り運転を防ぐ
図1 運転者の表情から「眠気のレベル」を判断し、居眠り運転を防ぐ
Nuanceは「CES2019」において、Dragon Driveで開発したオートモーティブアシスタントに、AffectivaのAutomotive AIを組み合わせて運転者の眠気や感情に応じて音声対話を変化させるデモを行った。車載カメラの映像を基に分析する表情マーカーの値を基に、運転者の眠気レベルを判定。レベルがしきい値を超えると注意を喚起する。レベルがしきいを超える回数が増えるにつれて、警告音や警告メッセージの内容が変化し、運転者からの応答を要求するなど注意喚起が強まるように設定している。Nuanceが作成。
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