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CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代の生き残りをかけて、米ゼネラル・モーターズ(GM) CEO(最高経営責任者)のメアリー・バーラ(Mary Barra)氏が3つの決断を下した。北米工場の生産を停止し、電気自動車(EV)戦略を転換。自動運転子会社CEOにGM前社長を抜擢した。「異業種を含む大競争を勝ち抜くにはスピードが勝負」とBarra氏は強調する。

写真:AP/アフロ
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 「自動車産業の進歩は速い。持続的な成長のためには、迅速で正確な経営判断が求められる。米国政府から批判を浴びているが、正しい戦略と確信している」─。米ゼネラル・モーターズ(General Motors:GM)CEO(最高経営責任者)のメアリー・バーラ(Mary Barra)氏は、米オートモーティブ・ニュース(Automotive News)が2019年1月にデトロイト市内で開いた国際自動車会議でこのように述べた(図1)。

図1 3つの決断を下したGM CEOのMary Barra氏
図1 3つの決断を下したGM CEOのMary Barra氏
国際自動車会議で、「自動車産業の進歩は速い。持続的な成長のためには、迅速な経営判断が必要になる」と強調した。
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 Barra氏の言う「正しい戦略」とは、2018年11月に公表した米国事業の再編計画を指す。北米にある3つの組立工場と2つの部品工場の生産を2019年内に停止し、6000人を超える従業員を対象にした人員削減を行う方針だ。

 生産を止める車種を見ると、ビュイック(Buick)ブランドの「LaCrosse」やシボレー(Chevrolet)ブランドの「Impara」、キャデラック(Cadillac)ブランドの「CT6」などのセダン系車種が並ぶ。2011年に発売したChevroletブランドのハイブリッド車(HEV)「Volt」も含まれる(表1)。

表1 GMの事業再編計画
北米の3つの組立工場と2つの部品工場の生産を2019年内に停止し、6000人を超える従業員を対象にした人員削減を行う。GMの資料を基に編集部が作成。
表1 GMの事業再編計画
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米国でも「選択と集中」を加速

 リーマンショックによる経営破綻からの復活を託されたBarra氏が、GMのCEOに就任したのは2014年。それから同氏は収益基盤を立て直すため、事業の「選択と集中」を推し進めてきた。

 米国と中国を中核市場と位置付け、2017年には傘下のドイツ・オペル(Opel)をフランスのグループPSA(Groupe PSA)に売却し、販売不振だった欧州市場から撤退した注1)。同年には、スズキが約50%のシェア(市場占有率)を握り、小型車が中心のインド市場からも撤退した。こうした戦略がついに、中核市場の米国にも及んできた。

注1)赤字を理由にGMはOpel をGroupe PSA に売却したが、同社は買収後わずか1年でOpelを黒字化した。

 米国市場では、選択と集中で既存事業の収益基盤を強化し、電動化や自動運転などの次世代技術に重点的に投資する動きが加速している。先行したGMに続き、米フォード・モーター(Ford Motor)も同じ道を歩む。日産自動車は、米国内の完成車工場で人員整理を行う計画である注2)

注2)一部報道によると、小型ミニバンや中型セダンを造る米ミシシッピ州のキャントン(Canton)工場で、最大700人の人員削減を計画している。

 GMが大規模な米国事業の再編計画を打ち出した背景には、4つの不安定要因によって米国市場が大きな転換期を迎えていることがある(図2)。第1の要因は、市場の成長が鈍化していることだ。

図2 米国市場を取り巻く不安定要因
図2 米国市場を取り巻く不安定要因
市場のピークアウトやセダンの販売不振の他、新協定「USMCA」の合意や燃費規制の緩和という4つの要因を抱える。
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 調査会社のマークラインズによると、2018年の米国新車販売台数は1727万台となり、前年比で0.3%の微増だった。米トランプ政権の大型減税などの効果で前年並みの実績を維持したが、市場のピークアウトは鮮明になっている。ローン金利の上昇などで、2019年は1700万台を割り込むとみられる。