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自動車の電子制御部品やソフトウエアなどの配置と構成の規則である電子プラットフォーム(基盤)。2019年に「分散型」から「集中型」への大転換が始まる。先導するのがドイツ・フォルクスワーゲンだ。移動サービスMaaSの普及に備える。集中型への転換は、ハードとソフトを分割して調達できる新しいサプライチェーン(部品供給網)が始まる契機になる。ソフト開発の主導権を巡り、完成車メーカーとメガサプライヤーが競う新しい競争が始まった。

写真:フォルクスワーゲン、コンチネンタル
写真:フォルクスワーゲン、コンチネンタル
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 ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)が、アクチュエーターやセンサーなどのハードウエアとソフトウエアを分割して開発できる車載電子プラットフォーム(基盤)の刷新に力を注ぎ始めた(図1)。ソフトとデータがクルマの付加価値を左右する移動サービス「MaaS(マース)」の普及に備える。時間がかかるハードの開発に合わせることなく、ソフトを頻繁に更新できる仕組みを構築する。

図1 ソフトウエアの付加価値が大きく高まる
図1 ソフトウエアの付加価値が大きく高まる
VWは「vw.OS」と呼ぶ車載ソフト基盤を開発し、ソフトとハードを分割して開発する。同社の資料を基に編集部が作成した。
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 分割開発の実現は、自動車の部品供給網(サプライチェーン)が大きく変わる契機になる。完成車メーカーは、ソフトとハードをそれぞれ異なる部品メーカーに発注できるからだ。

 特に完成車メーカーと直接取引する1次部品メーカー(ティア1)にとって、新しい競争の号砲が鳴ったことを意味する。これまでハードとソフトを一体で納入することで、部品の付加価値を高めてきた。分割発注になれば、「ハードだけを手掛けるティア1は、もうからなくなる」(外資系ティア1幹部)。

 ハードの“おまけ"だったソフトが、複数のECUを統合して新機能を生み出す付加価値の源泉になる。ハードを受注した企業は、ソフトを手掛ける企業の要求に従う「下請け」になる可能性が高い。ハードではなく、ソフトを受注できるか否かがティア1の今後を左右する。