日産自動車は、2020年に330億円を投じて栃木工場の生産ラインを刷新する。この投資決定が示すのは、日産が電動化戦略で現実路線を選んだことである。新ラインによって、電気自動車(EV)とハイブリッド車(HEV)、ガソリン車を需要に合わせて柔軟に生産できるようになる。
「次世代のクルマづくりでは『CASE』の開発に注目が集まりがちだが、複雑かつ高度な生産技術が明日の飛躍の要になる」-。生産技術の重要性を訴えるのが、日産副社長の坂本秀行氏である。電動車両や自動運転が普及していく中で、「部品の組み合わせが複雑になって生産工程の難易度が格段に増す」(坂本氏)からだ。
その対応策として日産が6年という長い時間をかけて開発したのが、次世代の車両生産のコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」である。導入第1弾は栃木工場で、330億円を投資する。
「数え切れないくらい多い」(同氏)という同コンセプトを構成する生産技術の中で、最も重要なのがパワートレーンの一括搭載システムである(図1)。ガソリン車やEV、HEVなど異なるパワートレーンの車両を1つのラインで生産できるようにした。日産は、栃木工場を皮切りに同システムを世界中の全工場に展開していく計画だ。