全4918文字
PR

電気自動車(EV)の勢いに押され、存在感が薄れている燃料電池車(FCV)。だが、この劣勢をひっくり返す動きが出てきた。引っ張るのはトヨタ自動車だ。燃料電池(FC)システムの最大の課題だったコストを、従来の1/2に低減した新型車を2020年末に発売する。心臓部のFCスタックは、他社の乗用車や商用車、さらに“街”にまで供給する戦略を実行に移す。

写真:トヨタ自動車、三菱ふそうトラック・バス
写真:トヨタ自動車、三菱ふそうトラック・バス

 燃料電池車(FCV)を“普通のクルマ"にする─。トヨタ自動車が2020年末に市場投入する予定の次期FCV「MIRAI(ミライ)」に課せられた最大の使命だ。

 トヨタが初代MIRAIを投入したのは2014年12月。最も“普通のクルマ"とかけ離れていたのは、「売れば売るほど赤字になる」(トヨタの関係者)くらい、燃料電池(FC)システムのコストが高かったことである。車両の販売価格は、補助金の適用後で約500万円。発売から5年以上たつこの高級車の累計販売台数は、世界で1万台程度にとどまる。

 自動車メーカーがFCVに取り組む理由はゼロエミッションの実現だ。走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないという点では電気自動車(EV)と同じ。ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)を筆頭に、ゼロエミッション車の主軸としてEVを推す動きが目立つ。

 だが、トヨタの考えは違う。同社のFCV開発者は「2020年代前半に一度、EVからFCVへの揺り戻しが必ず起きる。このタイミングがFCVにとってのターニングポイントになる」と潮目の変化を“予言"する。