自動運転レベル3に関する国内法の整備で世界に先行した日本。2021年1月には、その基となった自動運転レベル3に関する初めての国際基準が発効することも決まった。だが、自動運転レベル4関連では、米国が攻勢を強める。20年4月には完全自動運転向けとして世界初となる安全規格を発行、有力規格策定団体2者が手を結び、その影響力の拡大を図ろうとしている。
2020年6月2日、規格策定でこれまでは歩み寄ることのなかった米Society of Automotive Engineers(SAE、米自動車技術会)と米Underwriters Laboratories(UL、米保険業者安全試験所)の有力2規格策定団体が手を結んだ。両者は、自動運転に関連した規格で協調することで合意した。自動車など自力で推進する乗り物関連の規格を手掛けるSAEと、安全規格に強いULが手を結ぶことで、米国で自動運転に関連した規格の策定が加速しそうだ(図1)。
今回の提携によって、SAEはまず、完全自動運転に向けた世界初の安全規格「ANSI/UL 4600」を参照する規格を開発する方針。さらに両規格団体は、新たなパートナーの獲得を模索する構えだ。
今回の協調の背景として考えられるのが、United States Department of Transportation(USDOT、米運輸省)が20年1月に発表した、米連邦政府の38の省庁・独立機関・委員会および大統領府にまたがる自動運転への取り組みを統合するためのガイダンス「Automated Vehicles 4.0(AV 4.0)」である。大統領府とUSDOTの意向を踏まえたもので、自動運転において米国がリーダーシップを確保するためのアプローチを確実に実施するための10の原則を詳述する注1)。
SAEとULの提携は、こうした米国政府の積極姿勢とも合致するもので、ANSI/UL 4600の重要性は今後さらに増していく可能性が高い。ここでは、自動車関連の他の安全規格との違いを含め、ANSI/UL 4600の本質を紹介する。