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制御が容易な電気式システム

 鉄道車両のドア開閉システムには、「空気式」と「電気式」がある()。前述したように、富士電機の製品は電気式である注2)

表 電気式システムと空気式システムの比較
電気式は空気式に比べて障害物を検知しやすく、開閉動作を任意に設定できるほか、ドアの状態監視も容易である。富士電機の資料を基に日経Automotiveが作成。
表 電気式システムと空気式システムの比較
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注2)富士電機の電気式の鉄道用ドア開閉システムは、日本で4万3000台、海外で3万2000台の納入実績がある(2020年2月末時点)。日本ではゆりかもめのほかに、JR東日本や東急電鉄、東京都交通局(都営地下鉄)などに、海外では米ニューヨーク市営地下鉄や同ワシントン地下鉄、シンガポール地下鉄などに採用されている。

 圧縮空気を利用してドアを開閉する空気式システムは、空気を圧縮するコンプレッサーやシリンダー、駆動機構などで構成する。構造が単純で確実に動作し、故障が少ないといった利点がある。現在、日本の鉄道車両の多くは、空気式である。ただ、同システムはドアに挟まった障害物の検知が難しく、ドアが開いている状態と閉まっている状態しか把握できない。ドアの開閉速度を調整するのも難しい。

 電気式システムはサーボモーターや駆動機構、エンコーダー、コントローラーなどで構成する。エンコーダーは位置決め用のセンサー、コントローラーはドアの動きを制御する装置である。

 電気式はサーボ制御の技術を使うことで障害物の検知が容易である。開いている状態と閉まっている状態に加えて、ドアの現在位置や負荷の状態などを把握できる。ドアの開閉速度は、ソフトウエアによって変更が可能だ。こうした理由から世界の鉄道車両のドア開閉システムは、空気式から電気式への置き換えが進んでいるという。

 例えば電気式のシステムは、障害物の検知ではセンサーを使わない。エンコーダーの位置情報とモーターの電流値の変化によって、障害物の存在を検知する。何かがドアに触れると、モーターの電流値が上がる。また、完全に閉まっている状態や完全に開いている状態とは、エンコーダーの位置情報が異なる。

 これらの情報を基に障害物の存在を検知し、ドアに障害物が挟まりそうになると自動でドアを開く。ドアの自動開閉の速度やドアの開閉タイミング(ドアを開いてから閉じるまでの時間)などは、富士電機が開発したソフトウエアで制御する。

 また、トヨタはe-Paletteの実用化に当たり、MaaS用のサービスプラットフォーム「MSPF」を通じて、様々なモビリティーサービスを提供する計画である。同プラットフォームでは収集した車両情報を、車両に搭載したDCM(車載通信機器)を介して、同社のビッグデータセンター「TBDC」に蓄積する(図4)。

図4 トヨタのモビリティー・サービス・プラットフォーム(MSPF)
図4 トヨタのモビリティー・サービス・プラットフォーム(MSPF)
e-Paletteの速度や位置、自動運転の状態などに加えて、ドアの開閉状態も同プラットフォーム(車両状態管理API)を通じて把握する。トヨタの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 このデータセンターに蓄積した車両情報を基にトヨタは、e-Paletteの運行状態(ドアの動作状態を含む)など車両の状態管理を行う。富士電機の電気式ドア開閉システムは、こうしたトヨタの車両管理システムにも対応できるという。