アクセルペダルを踏み間違えて急加速したことによる事故の発生が後を絶たない。こうした事故を減らすためトヨタ自動車は、新たな「急加速抑制システム」を開発した。他社を含めて、超音波センサーを使うこれまでのシステムは、壁などの障害物がある場合にしか対応できなかった。トヨタの新システムは超音波センサーを使わず、障害物がない場合でも作動する。トヨタはどのようにして対応したのか。その取り組みを追う。
トヨタの新たな急加速抑制システムには、新型車向けと既販車向けがある。このうち新型車向けシステムは、超音波センサーを使う同社の現行システム「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」に、今回の新システムの機能を追加する形になる。自動ブレーキとは別のシステムとして作動する。
新型車向けシステムは、部分改良して2020年7月に発売したハイブリッド車(HEV)「プリウス」とプラグインハイブリッド車(PHEV)「同PHV」に初めて搭載した(図1)。今後、搭載車種を増やす計画だ。
既販車向けのシステムも、超音波センサーを使う現行の後付け装置に、新システムの機能を追加する形になる。今後、新機能を搭載した後付け装置の販売を強化する注1)。
超音波センサーだけでは対応できない
トヨタが新システムを開発した背景には、超音波センサーを使う急発進抑制システムだけでは、ペダル踏み間違い事故を防げないという事情がある。実際にペダル踏み間違い事故は、障害物がない環境でも起こっている。
同社先進技術開発カンパニー先進技術統括部で安全技術企画グループ主査の池田幸洋氏は、「超音波センサーを使う従来システムで、ペダル踏み間違い事故の約7割(障害物がある場合)には対応できるが、残りの約3割(障害物がない場合)に対応するには新たな技術開発が必要になる」という(図2)。
従来システムでは対応できない約3割の踏み間違い事故を減らすためトヨタは、今回の新システムを開発した。超音波センサーを使わずに、ビッグデータを活用した。具体的には、車載ECU(電子制御ユニット)から取得した実際の事故発生時のデータと通常走行時のデータを利用する。